「じゃ、転生して貰うから。」
「はぁ!?」
「行ってらっしゃい!」
そんな軽いやり取りで、この世界に転生させられて早……何年だっけ?
「シェルス?」
「ん?ミラ、どうした?」
「…私たちが出会って…もう何年だっけ?」
「…一桁じゃないぞ。後一週間したら、ちょうど二千年目の節目だな。」
「あ、そっか…」
「当日はちゃんとお祝いしよう、ガルズにシャナクも呼んで…」
「…あの二人、忙しいんじゃ…」
「安心しろ…こっちの結婚式を祝ってくれたし、予定は全部キャンセルしてでも向かうって言ってたからな……ちなみに幸い、急ぎの物は昨日全部終わったって聞いたぞ。」
「…私、聞いてないけど?」
「君は仕事だっただろう?」
「ま、そうだけど…」
「と言うか、どうしたんだ…急に?」
「う~ん…」
そもそも聞くまでも無く…"私"は知っている…ただ、それでも現実逃避がしたかった…今更だと、分かっていても…あ。
「どうした?まだ気にしてるのか?」
彼の逞しい腕が首に回される…私が苦しくない様、その力は控え目だ……もう少し強くても"私"の身体は問題無いのに…
「…いや、それは気にするでしょ…だって…」
「?…だって?」
「ハァ…前に言ったでしょ?私は元は男で、貴方に近付いたのも、その高い潜在能力目当てだったって…」
"私"…いや、俺は元はこんなファンタジーの世界では無く、高いビルの中であくせく働いて日々の糧を得ているただのサラリーマンの男だった…ちなみに生前は彼女居ない歴年齢で…もちろん彼氏が居たなどと言う事も無い。
「!…シャナクから今、思念通話の誘いが来てるんだが…出て良いか?」
「ハァ…私にも聞こえる様にして…どうせ、私をからかうつもりに決まってるから…」
彼が苦笑を浮かべながら「了解」と言ったところで私の意識が軽く"何か"に引っ張られる感覚を味わう。
『…あ?エラン?ミラ、今どうしてる?』
「いつもの通りだ…と言うか、その名で呼ばないでくれ…今の私はシェルスだ。」
『クスクス…そうだったわね…それで「そもそも私、聞いてますからね?」あらら…でも…そうね、貴女にも直接言うべきかしらね…』
「ハァ…先に私に言わせて欲しいんですけど…何で私を女にしたんですか?男でも、良かったじゃないですか…」
『また今更の質問ね…で、それは本心?』
「っ…」
その口調と声だけでも分かる…今、彼女は相当強い目をしているのだろう…
『貴女が女として転生したのは確かに私の手違いだけど…でも、貴女は望んでいたわよね?』
「っ…ええ!そうですよ!確かに、望んでましたよ…」
性同一性障害、嘗て俺の居た世界ではこの病…病気と言って良いのかも分からないが、自分の肉体と精神が一致しないこの症状を持つ者は一定数居た…
『それに…そのお陰でエ…シェルスとこうして結ばれる事が出来たでしょ?』
「そうですけど…でも、最初は…」
『貴女が転生の特典として選んだのはステータス…自分と他人の能力値を実際に数値として見る事が出来る目…そのお陰で、エラン…今は敢えてこう呼ばせて貰うけど彼を見付けた…』
この世界に転生した時、俺の身体は何故か女に…自分は本当に男なのかと何度も悩みつつも、それでも昔から男として生きて来た為にそれはもうパニックになった…そして…
「彼を利用しようと、初めはそう思ったんですよ…転生当初から俺の能力はとてもじゃないけど一人で旅が出来る程高くなくて…ハッキリ言って、肉壁を探さないとどうしようも無かったんですよ…」
ご多分に漏れず、俺の転生したのはファンタジー世界…そして当然存在する魔王…人の文明が息づいてるのが奇跡と思える程、人以外のとある種族のせいで最悪の治安…まぁ当時は、人間も善人より悪党の方が遥かに多かったけど…
『そして…"彼"を見付けた…』
「見付けて貰えたな。」
「やめて!二人して言うの!」
今でこそ、性別すら超えた美貌を持つ二人が私をからかっていると言う図…と言うか、私よりシャナクとくっ付いた方が…いや、彼女はちゃんと相手居るんだけどね…
「遠回しだけど、それでも私はちゃんと肉壁になれって言ったつもりなんだけど…」
「強くなって、私を守れる様になりなさい…だったかな?…正直、改めて言うとプロポーズの様に聞こえるな……まぁ、当時の私にそう勘違いする方が無理だったんだがな…」
『貴方には当時かなり強い呪いが掛かっていたものね…良いのよ?私を責めても…』
「見た目が怪物になる呪い…正式な名称は無かったが、そんな風に揶揄された事も有ったか…良いさ、あの呪いのお陰で私は高い能力値を持ち、何より彼女に見付けて貰えた…そもそも既に解けているしな…だから、貴女には感謝している…何より、それは貴女のせいでは無いだろう?…この呪いを作ったのだって貴女じゃない…そして…もうこの世界を管理しているのも貴女じゃない…責められる謂れは、何処にも無い筈だ…」
『ハァ…結局、こんな良い男に愛されてて何が不満な訳?』
「それは昔の貴女にそのまま返せますけど!?」
『え~…今更?』
「自分の作った世界に…外から死んだ男を呼んだら、初邂逅の時点で一目惚れ…でも、素直になれなくて事務的に振る舞って送り出したけど忘れられず…百年間悶々として、ある時部下から世界の異変を聞いて…サボってたツケが来たかと思いながら世界を見たら…その男が何故か魔王になってて…横に居た女性に嫉妬して、わざわざ下界に降りて受肉までして戦争を仕掛けたって話…」
『ホント、今更よね~…と言うか、実は初めから両想いだったとか…私にも予想出来無かったわね…』
その戦いと、その後上に戻った彼女が下界に送る転生勇者たち…結局、それこそ気の遠くなる時間続いた戦争で一旦幾人死んだのか……まぁ、既に人では無くなった私の方も今更それについて思う事は本当は無いんだけど。と言うか、やっぱりこの程度では突っついても無駄なのか…ハァ…この人には一生勝てる気がしない…
「お茶でもどうだ?」
「…え?いつの間に?」
「二人の話は毎回途中から堂々巡りになるからな…」
要は暇だから抜けてたと…
「さて、シャナク?」
『何かしら?』
「ガルズからメッセージだ…『旧友と話に花が咲くのも良いが、仕事は先に終わらせてくれ』…だそうだ。」
『あちゃあ…分かった、そろそろ切るわね…ミラ?いい加減ウジウジしてないで覚悟決めなさいよ?』
「分かってますよ…」
シェルス…嘗てエランに掛かっていたソレとはまた違う呪い…それが、俺にも掛かった…その内容は…
「ホント…わざわざ、転生してからまで戻って来なくても…」
「ん?…ああ…不老不死になってしまった君とは最早同じ時間は生きられない…だから、死んでからも転生後の肉体にこの記憶と能力は引き継げる…そんな魔法を私は、作った…」
作っちゃったね…全てを教え込んだのは元は私なのに…今じゃ、私より能力は遥かに高いもんね…と言うか、私の十年分の努力を一日でモノにして行くこの人に嫉妬……しても、今更仕方無いか…能力的には遥か上でも、彼はこうして私に頭を垂れる…
「君が望むなら、いくらでも臣下の礼は取れるが?」
「心を読まないで…」
「確かにそう言う魔法も有るが…今のは君が分かりやす過ぎるだけだな…で、どうする?」
「う~ん…今日は良いよ、たまにならお願いしようかな。」
「ああ、良いとも。」
そう言って笑う彼の顔は間違い無く性別を超えた美しさが有る…何より出会った当初ざんばらで色も汚れて本来の色も分からなかった彼の髪は今は、鮮やかな銀色で…
「極端な話、転生の度に実はイケメンの身体を乗っ取ってるとか言わない?」
「する必要が無いな。と言うか、転生後の見た目が気に入らなければ記憶が戻ると同時に…見た目を自分の魔法で作り替えるだけだからな。」
「……今までやった事は?」
「幸い、一度も無いな。」
「いつも思うけど…看取ったと思ったら、半年としないでここまで戻って来るの何で?」
「今日は質問が多いな…大体、いつも赤ん坊の時にもう記憶が戻る…そこから肉体を急成長させて、生まれた場所をさっさと出て君の所へすぐ向かっているだけの話だが?」
「…私と出会って後悔した事は?」
「一度も無い。」
「ホント、私…とんでもない人を拾っちゃったよ…」
「君は、後悔してるか?」
「ふぅ…貴方を見付けて、拾おうとした事に後悔は無い…でも、私の存在が転生した後まで貴方を縛り続けてる…良いんだよ、別に私の事なんて忘れても?」
「それは出来無いな。」
「…まぁ、たまたま成人してから記憶が戻って婚約者を殺してまで来た事も有ったっけ…と言うか、あの時貴方女だったよね?」
「あの時は肉体を直してる暇も無かったな…君はそれでも構わないと言うからそのままにしたが…」
どうも彼はあんまり覚えてないみたいだけど…あの時は、私は精神的に一番安定していた様に思う…普通の友人の様に付き合えた…彼も女性の肉体と元々の肉体の記憶に引っ張られるのか、普段旺盛な性欲もかなり抑えられていた…たまになら、女性の身体に入ってる彼にまた会いたいかも知れない…
「これから先もずっと…私の為に生きるつもり?」
「君がその生を終えるまで…まぁ、簡単に死なせるつもりもないがな。」
「…終わる時が来ると思ってるの?」
「始まりが有れば終わりも何処かで必ず有るものだ…そして、それが君と私の解放される時だ……まぁ、君が本気で嫌がれば私も離れるが?」
「…そんな事、出来無いの分かってる癖に…」
色々言ったが…今の私は完全に女だと定義出来る…そして長い付き合いの上、今更こんな見た目も中身もイケメンの彼を手放せる訳が無い(ちなみに、女性の時もハッキリ言って見た目は超美人だった…アレで見た目まったく弄ってないとか、どうなってるの本当に…)
「ならば、私が離れる事は無い…仮に死しても、また戻って来る。」
「そう…」
死がふたりを分かつまで…でも、私はもう不老不死で…彼は死ねるけど、死んでもこうして私の元まで帰って来る…命の循環の原則から外れている私たちの愛は決して健全では無いのだろう…
「シェルス?」
「ん?」
「キス、してく…!」
彼の顔がすぐに近付いて来た…
「…もう…最後まで言わせて…」
「そんな顔されたら、我慢出来るわけ無いだろう。」
「…続けるならベッドでお願い…」
「無論だ…幸い、明日は仕事ももう無い。」
「……え?明日の朝まで?」
「何言ってる?明後日の朝までだ。」
今程、彼にまた女になって欲しいと思った私は責められる理由は無いと思う……まぁ、女性の時の彼って色々と可愛いんだけどね…(最初の内は鳴かせる事も出来るけど、最後はいつも組み伏せられてるのはご愛嬌)
「…成程、女か…なって見せようか?」
「……本当に心を読んでないの?」
「ああ。…で、どうする?」
「…そのままで良いよ。」
今はシェルス…彼のままで抱いて欲しい…と言うか多分、中身が彼のままなら初めから女性だった時と違ってこう…旺盛な性欲はそのままだろうしね…
「えっと…優しくして?」
「心配無い…回復魔法を使いながらするからな。」
「ハァ…もう好きにして…」
それって…確実に優しくする気は無いって意味だよね?と言うか、毎回肉体は不老不死になった私と違って普通の人間なのに…どうして彼はこう毎回普通に人間を超えているのか…
「あ、万が一の為に部下への引き継ぎは忘れないでよ?」
「必要無いとは思うが…尤もだな、行くとしよう。」
彼、基本寝坊とかしないから…って!
「ちょっと!下ろして!?」
「断る。」
そのままお姫様抱っこで運ばれる私…そりゃ部下も皆私たちの仲を知ってるけども!ハァ…ホント、これから先…何年経っても彼に勝てる気がしないなぁ…ま、でも…彼に組み伏せられてる時間が私にとって一番幸せを感じる瞬間だったりもするんだけどね…
……取り敢えずオリジナルで話を書くのは絶対向いてないと分かりました。