ミリーがいよいよ我慢の限界になったらしくクール村に行きたいと騒ぎ出した。ドーンが宥めてるが効果は無い。…こういう時にまたラティは寝坊だし…。マルトスさんから何の便りも無い以上治療は芳しくないのは明白。……ミリーを行かせるわけにはいかない。ん?ようやくラティも出て来たか。…丁度いい。三人に猛反発されるのは目に見えてるけど俺が代表で見に行く事にしようか…?あれは…鳩だ。ドーンが近付いて行く。……この世界の通信手段は伝書鳩による手紙のやり取りがほとんどだ。……恐らくマルトスさんからじゃないだろうか…?
「何て書いてあるの?」
ミリーがドーンを急かすのに合わせ俺もドーンの読む声を聞きながら手紙を覗き込む…
手紙の差出人はやはりマルトスさん…その文章はあまりにも切羽詰まり文字も歪み…マルトスさんの焦りが伝わってくる……そして内容も俺の想像を遥かに超えていた
クール村の伝染病の原因は不明。しかも空気感染の心配は無いが罹患者の身体に触れただけで感染し潜伏期間は僅か一~二時間しかない…。法術も効果は無かったと……そして自分もその伝染病にかかってしまった事実が淡々と書かれていた…最後に、クールにはもう近付くなと…。
そこまで読み終えた所でミリーが走り出した。…くそっ!止めるのが遅れた!俺はミリーを追って走り出した。
「ミリー!キリト!待て!」
ドーンの呼び止める声が聞こえるが無視した。……くそっ!俺は分かってた筈だ!簡単には終わらないって!何で俺は放っておいたんだ!?絶対俺にだって出来る事があった筈なのに…!SAO時代の経験を活かして道でないところも走りミリーが外に出た所で何とか追い付いた。
「待て!ミリー!」
「何よキリト!お父さんが…!」
「だから待てって!一人で行くな!俺も行く!」
「キリト…ありがとう!」
俺はミリーと共に走る…ラティたちが出遅れてるが待ってる暇は無い。
「…!チッ!そこを退け!」
お馴染みの兎共が道を塞ぐが俺は咄嗟にミリーを抱き抱え、連中の頭上を飛び越える。
「キャッ!ちょっとキリト!?」
「黙ってろ!舌噛むぞ!」
奴らもさすがに驚いたらしく完全に動きが止まっていた。今のうちに…!…ラティ、ドーン…ごめん!
この後確実にこいつらに遭遇するだろうラティたちに謝りながら俺はミリーを抱いたまま走った。
「…やっと着いたか……」
こういう時に限ってモンスターとの遭遇率の高い自分の不運を嘆きながら俺は一息着く。
「…キリト、そろそろ…」
「ん?ああ…悪い…」
俺はミリーを下ろす。
「……」
クール村は酷いものだった。村のどこを見ても石像しかない……くそっ!もう全滅してしまったのか…!
「…お父さん……」
「…ミリー…」
俺はミリーにかける言葉が無かった……
「…ミリー、ここが最後の家だ。」
「……」
「…見てくるといい。俺はここでラティたちを待つ。」
「分かった…行ってくるね。」
「…ああ。」
ミリーの後ろ姿を見送り俺は家の壁にもたれかかった。