ネタ帳   作:三和

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落第騎士と城砦の聖女2

「リーズさん…今までお世話になりました。」

 

僕は目の前の彼女に向かって頭を下げた。

 

「うん…取り敢えず…私が出来る事はもう無いから…一輝、後は君次第だよ…これからも頑張って。」

 

「はい。」

 

「……本当は君が正式に伐刀者になれるまで見届けたかったけど…」

 

「大丈夫です…僕はこれからも貴女に教わった事は忘れずに…」

 

今まで彼女と過ごして来た日々が走馬灯の様に……走馬灯…

 

『ぐあっ!』

 

『…一輝、今の君と私では力の差が大き過ぎる…受ける事より、躱す事を心掛けた方が良い。』

 

『はい…』

 

そう言われても、速すぎて…受けるのが精一杯…

 

 

『‪ごふっ!?』

 

『あ!?ごめん!大丈夫!?』

 

み、鳩尾にモロ、に…

 

 

 

『リーズさん、朝ですよ?今日仕事って言ってましたよね?起きて下さ…っ…』

 

この人はまた下着姿で…僕を男と思ってないのか?

 

『う~ん…』

 

『っ!?』

 

肘がこっちに…!?

 

『ん…ふわぁ…おはよう…一輝…』

 

『……おはようございます…』

 

『うん…』

 

ぎ…ギリギリで躱せた…

 

 

 

「…一輝?」

 

何かこの人と一緒にいて死にかけた以外の思い出が全然浮かんで来ないんだけど…いや…他にも何か…そうだ…

 

 

 

『そう言えば聞くのを忘れていたんだけど…』

 

『え?』

 

『君、学校は?』

 

『っ…行ってないです…』

 

『…義務教育…教育を受けられるって言うのはとても幸せな事なんだよ、一輝…修行に費やすだけじゃなくてね…』

 

『でも…僕は…』

 

『あ…ごめん…そうだったね…君は…う~ん…そうだ、一輝、君の家の電話番号教えてくれる?』

 

『え…?』

 

 

 

『一輝、話は着けたよ。君はこれからはこの部屋から学校に通うと良い。』

 

『え…でも『大丈夫だから…ね?』…はい…ありがとうございます…』

 

 

 

そうだ…この人のおかけでまた学校に行けるようになって…う…

 

 

 

『一輝~♪』

 

『っ…!?』

 

ど、どうしてこの人が来てるんだ!?公開授業の日程を知らせるプリントはちゃんと処分した筈…しかも私服じゃなくて…よりにもよってあの格好のまま来てるから浮いてしまっている…!

 

『すみません…保護者の方ですか?』

 

『はい!黒鉄一輝君の『もう少し静かにお願い出来ませんか?』…す、すみません…』

 

頼む!頼むから大人しく…あ、また大声上げたから追い出された…本当に何をしに来たんだ…あの人は…!

 

 

 

「一輝?お~い?」

 

考えれば考える程ろくな思い出が浮かんで来ない…いや、嬉しかった事もちゃんとあった筈…そうだ…

 

 

『はい。』

 

『え?これは『今日は一輝の誕生日だったよね?プレゼントだよ』…え?本当に?』

 

『うん。』

 

『…開けてみても?』

 

『良いよ。』

 

『…あの…これは『目覚まし時計』…えっと…何でですか?』

 

『ん?君、昨日寝坊したでしょ?』

 

『……ありがとうございます。』

 

『あっ、あれ…!?気に入らなかった!?』

 

『いえ…嬉しいですよ?』

 

『棒読み!?』

 

……昨日、僕が寝坊したのは……仕事先で酒を飲んで泥酔した状態で帰って来たこの人が絡んで来て寝かし付けるのに時間がかかったからなんだよなぁ…本当にこの人は…

 

 

 

「一輝!」

 

「っ!?何ですか!?」

 

「何って…さっきから呼んでるんだけど…」

 

「すみません…今まであった事を思い出してまして…」

 

「そっか…」

 

リーズさんが僕の頭に手を置くと撫で始めた…

 

「っ…あの…何を…?」

 

「ん?何か、感慨深いなって…」

 

「あの…さすがに恥ずかしいんですが…」

 

「良いじゃない。君が甘えられるのも多分、これが最後だよ?私は当分日本に戻れそうもないし…それに、君はこれから歩むのはとても辛い道になると思うから…」

 

「リーズさん…」

 

「さて、そろそろ飛行機の時間だ…頑張ってね、一輝「あの!」何?」

 

「教えてください…結局リーズさんの仕事って…もしかして「駄目だよ一輝」っ…」

 

「うん。もしかしたら君が考えてるのは正しいのかもしれない…でも駄目だよ。何度も言ったけど教えられない…例え、今君が言う事が正解だったとしても私は答えられない。」

 

「っ…リーズさん…」

 

やっぱりこの人は…

 

「そうだね…その代わりと言っては何だけど、一つ約束しよう。」

 

「…何ですか?」

 

「君がもし、伐刀者として一人前になったらまた会おう…ううん…多分君と私は絶対にまた出会う…私はそう思う。」

 

「僕は…なれるでしょうか…?っ…リーズさん…?」

 

僕はリーズさんに抱き寄せられた。

 

「うん。なれるよ…だって君は…私の弟子なんだから…」

 

リーズさんが僕から離れた…

 

「じゃあ、またね…一輝。」

 

「はい!また…何時か…」

 

リーズさんは僕に背を向けて歩いて行った…


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