しばらく待っていたら、ドクターがロニキスさんが俺たちを呼んでいると言うので、寄り道をする事無く艦橋へ向かう……ここで俺たち全員が楽しめる区画と言えばあの仮想空間のみだろうが、ラティたちも普通にここに所属している人たちと違い、もう二度と帰れない故郷の風景を見る気にはならないだろう…俺に至っては仮想空間ならもっとすごい物を知っているせいか、どうにも子供騙しに見えて来る…
行った先で、二千万人分の石像が俺たちのいた惑星から消えていると言われ、衝撃を受けた。イリヤさんは逸るラティを宥めているが、この数が一挙に消えるのはどう考えても第三者が関わっている筈だ…そして、どうせろくな目的には使われない…!
俺が自分の無力を責めていると、ロニキスさんが地球でレゾニアとこのウイルスの宿主生物を渡すよう交渉するから報告の為、俺たちに同行して欲しいんだそうだ……下らない。法外な要求をされる以前に相手が乗る訳は無い…向こうに貴重な資源を手放す理由は無いんだからな…!
「ロニキスさん。」
「何かね?」
「その話、断っても良いですかね?」
「……何故かね?」
「無駄だからですよ。相手が俺たちを資源としてしか見てないのはもう明白です。いくら貰っても手放したりしませんよ。奴らにとって俺たちは金の成る木なんでしょうから。」
「しかし「そもそも何でそんなに俺たちの為に動こうとするんです?良心だけで動くには割に合わない話だ…どうせ、其方も資源として俺たちの身体を狙ってるんじゃないですか?」……」
「キリト!お前何言い出すんだよ!?」
「考えてみろよラティ…この人たちにとって俺たちは他人だ、何の見返りも無く、家族でも無く、友人でも無い奴の為になんて行動するわけが無いだろう?…こいつらは神なんかじゃなく、ただの人間なんだからな…ある意味行動原理は俺たちと同じなのさ…お前だってクラトスに住む人たちの為に命は賭けられても、全く知らない奴の為にその力を奮ったりはしないんじゃないか?」
「それは…」
「じゃあキリトはこの人たちが私たちを騙してるって思ってるの…?だってこの人たちはドーンを助けてくれたじゃない…!」
「そういう可能性もあるって事だよ。ミリー、一応言っておくとこいつらはドーンを助けていない…ただ御大層な容器を用意して、その中にドーンを入れただけだ…助けてない。それに言ってただろう?助けられないって…それが嘘で無いとどうして言える?」
「分からない…キリトは何が言いたいの…?」
「…レゾニアって連中が本当にいて、俺たちを狙って石化する物質を俺たちの惑星に撃ち込んだのかもしれない…でも、こうは考えられないか?実はそこにいる二人の所属する組織がその物質を撃ち込んだ犯人なんじゃないかってな。」
「なっ!?何を言っているんだ!?私たちは「そうじゃないって言い切れる根拠は?」それは…」
「言っても理解出来無いとか機密だとか、そういう理屈は抜きにして欲しいですね…そもそも俺たちは皆を救いたくてここに来たんです。アンタらの部下じゃない…!ちんたらやってる場合じゃないんですよ!既に仲間が石化病にかかってるし、ミリーに至ってはたった一人の父親が何時石化しても可笑しくないんです!…こっちは必死なんですよ!分かりませんか!?どうせ分からないんですよね…貴方たちがそうやって悠長な事言っていられるのは所詮他人事だからでしょう?」
「しかしドクターが言っていただろう?石化しても「石化しても元に戻せるなんて理屈をどうして俺たちが信じられると思うんです?それに、何らかの理由で石像に損傷があっても戻せるんですか?」……」
「話にならないんですよ。貴方たちの言う通りにして皆が助かると言う保証が無い…信頼出来る根拠が無い。」
「なら、教えてくれる?どうしたら…信じてくれるのかしら…?」
「…レゾニアと其方の情報を全てください…俺たちにも分かる様に編纂した上でだ。」
「なっ!?そんな事出来るわけが「本当に貴方たちが俺たちの敵じゃなくて味方なら…出来ると思いますけど?それとも出来無い理由が何かあるんですか?」しかし…!」
「…分かったわ「イリア!?」艦長、もう無理ですよ。このまま彼の信頼が得られなかったら…彼、何をやるか分かりませんよ?飲みましょう、彼の要求を…そもそも私たちは私たちのルールの上で勝手に彼らを拘束しているも同然の状態です…彼がどうしても内情を知りたいと言うならそれぐらいはこちらが折れるべきでしょう?」
「だが、編纂と言ってもこちらはどうすれば良いか分からないんだが「なら俺が情報を閲覧し、纏めます…もう分かってるんでしょう?俺がある程度其方の話を理解出来ている事を?」…分かった、だが部外者の君一人でそれをさせる訳にはいかん。イリアを同行させても良いか?」
「それぐらいは当然でしょうね。良いですよ、それに俺もイリアさんの監視が出来ますから。」
俺がそう言った時、イリアさんは少し悲しそうな顔した…目を逸らした。俺は間違えるわけにはいけない。せめてラティとミリーの事は守らないと…そこで、さっきフェルウォームがこの艦で発見された時鳴った音がまた聞こえ、続けて声が聞こえて来た…
『艦長、ドーン君の容態が…』