「重要な器官が石化し始めました…危篤状態です。」
ドクターがやって来た俺たちにそう告げた…箱の中で衰弱しきったドーンを見て自分の無力さを改めて痛感する…元々俺にはどうする事も出来無かったという事を分かっていてもこういう考えは無くならない。
「艦長…お願いがあります…」
「何かね?」
「せめて…せめて…最後は家で…」
「最後なんて…君はただ、少し眠るだけだよ…」
「でももし…もし…治らなかったら…」
「……分かった。」
「俺たちも「おい」キリト?」
「…ロニキスさん、ミリーだけでもお願いします…連れて行ってやって下さい。」
俺はラティが何を言うのかを察し、ラティの肩を少し強く掴み、言葉を止めさせるとそう言ってロニキスさんに頭を下げた。
「何言ってるんだよ俺たちは「キリトとアスナ」え…?」
「そう言えば分かるだろ?」
俺は俺とアスナの関係をあくまで架空の話としてだがラティには伝えてる…ここまで言えばさすがにどれだけ鈍感なこいつでも分かる筈だ。
「え…?…えぇ「騒ぐな」モガっ!?」
漸く意味を察したらしく叫び出したラティの口を手で押さえる…全く、その鈍感さ、それに空気の読めなさ…本当にそろそろどうにかして欲しいな…
「…分かった。その代わり、イリアを同行させるぞ。」
「仕方無いですね…」
…少なくとも、ラティがいるよりは気持ちは告げやすい筈だ。
「分かってるな?ドーン君は確実にベッドの上に転送させるんだ。」
「はい。」
「ロニキスさん、少し良いですか?」
「ああ。だが、手短に頼むぞ?」
「はい。」
ドーンに別れは既に告げた。…でもまだ言っておく事はある…俺はドーンに近付き、耳元で小声で声をかけた。
『ドーン。』
『…このお節介野郎。』
俺が何をさせたいのかは当然ながら察しているらしい…その察しの良さ…ラティに少し分けてやって欲しいよ…ま、あいつは別に馬鹿って訳じゃないし、事、戦いにおいては本当に鋭い…問題なのは恋愛面が恐ろしく鈍い事か。
『うっさい。そろそろお前の相談受けるの面倒なんだ、潔く玉砕して来い。』
『…フラれる前提かよ…』
『お前だって本当は知ってるだろ?ミリーが誰を好きなのか。』
『…ああ。俺だって本当は分かってたよ…勝ち目が無い事くらいは。』
『今しか無いんだ。お前はしばらく眠る…その間に二人の間に何も起こらないと思うか?』
『……』
『ケリを着けろ、もしかしたらワンチャンあるかも知れない。』
『……分かったよ。ホント、今までありがとうな、キリト。』
『…馬鹿。これでもう会えないみたいな事言うな…さて。じゃ、頑張れよ。』
『おう。』
「…お待たせしました。無理を言って本当にすみません…」
「いや、構わない…始めてくれ。」
「はい。」
そして三人は光に包まれ、俺たちの前から消えた。