「ほら、ラティ、買って来たぞ。」
宿に戻って来た俺はラティに買った剣を渡した。
「ありがとう、助かるよ。」
そう言ってラティは剣を受け取るとベッド近くの机に立て掛け…いや、おい…
「…なぁ、ラティ…」
「ん?」
「…いや、確認しろよ…」
一応使えると俺は判断したけど、俺がそう思っただけで実際どの程度ラティが使えるかは分からない…
「キリトがもう確認してくれたんだろ?」
「一応な。俺としては、取り敢えず実用には耐えるレベルだと思ったよ。」
「なら大丈夫だろ。」
……いや、何がだよ…何なんだよ、お前のその変な信頼は…
「良いからとっとと振って来いって…ほら、まだ外も明るいしな。」
「えー…」
「…お前な、そろそろ良い歳なんだからそう言うの止めろって。」
「ハァ…分かったよ、行って来る。」
そう言ってラティはベッドから立ち上がると部屋を出て行った。
「…おいキリト。」
ラティの様子を見に行こうとして部屋を出た俺に廊下にいたシウスが声を掛けて来る。
「ん?」
「…何処行くんだ?」
「…ラティの様子を見に「止めとけ」…何だって?」
「…言うつもりは無かったんだがな…一緒に仕事する以上、見過ごせねぇ…言わせて貰うぜ、お前は過保護過ぎなんだよ。」
「…そう、思うか…?」
シウスが頷く…本当は言われなくても分かってるんだけどな…
「お前…ただ仲間を心配してるだけとか言いてぇんだろ?」
「ああ「違う」……」
「お前がやってるのはただのお節介…しかも度が過ぎてる…」
「……」
「その結果が今のあいつだ…お前らにあるのは信頼じゃねぇ…依存だ。」
「…そっか…そうだよな…」
指摘されるまでも無い…分かってた…でも認めたくなかった…ラティなら最終的に俺がしてやる事なんて何も無くなると思ってた…でも、今日までラティの性格はそれ程変わらなかった…それどころか、ドーンを救えなかった今、俺はもう失いたくない…ラティとミリーは何があっても…守りたい…そう思ってる…でも…
「シウス、俺は間違ってるんだよな…」
「ああ。」
「…じゃあ…どうしたら良いんだ…?」
俺は目の前の男にそう問う…俺はそれなりに長く生きた…と、思う…はっきりとは覚えてないけど、人の平均寿命並には生きた筈なんだ…そして全てを覚えてる訳じゃないけど記憶を保ったまま、こうして新たな人生を生きている…でも分からない…何故なんだ…?
「知るかよ、そんなモン自分で考えろ。」
そして男はそんな俺に答えをくれなかった…
「つーかだな、俺はそもそもそんなのどうでも良いんだよ。」
「え…?」
「今したのは単なる忠告だ…それ以上何も言う気はねぇ。で、俺はお前に用がある。」
「何だ…?」
「今から俺と戦え。」
「は…?」
「さっき剣を振ってるお前を見て少し興味が出て来てな、俺と戦え。」
「…理由が無い「俺はある…それとも怖気付いたって事で良いのか…?」……」
これは…何だ…ああ…そっか…これは挑発だ。何時もぶつけられるのは嘲笑混じりの何かドロドロしたのばかりだし、ラティやドーンなんかになると、身内としての感情を含むしな…今、シウスがぶつけて来てる様な真っ直ぐな戦意なんて…本当に何時以来だろうか…?
「分かったよ、やろうか。」
そして今この瞬間、俺たちの助けを待ってる筈のドーンの事も、さっきまであれ程心配していたラティの事も俺の頭の中から完全に消えた。
……俺は…戦いたい…この男、シウス・ウォーレンと…!それ以外の事はどうでも良い…!