シウスの背を追い、町を出る…特に話しかけたりはしない。何処まで行くのかも聞く必要は無い…何となく分かるから。
シウスはメトークス山に入って行く…後を追う…しばらく歩いて…やがて…湧き水を吐き出す…獣の姿をした山壁が見えて来る…俺は足を止めた。
……シウスは俺を置いて歩き、獣の壁を通り過ぎ、更に歩いた後、漸く足を止め…振り向いた。
「ここなら邪魔は入らねぇ。」
「そうだな…」
俺は背中の鞘から剣を抜いた。
「…構えねぇのか?」
俺は剣を持つ手を下げたまま…下段構えにすらなっていない。だけど…
「気にしないでくれ、これが俺のスタイルだ。」
「…さすがだな。」
「ん?」
「それだと俺はお前の狙いが読めねぇ…」
「そんなつもりは無いさ…これが一番俺にあってるだけだよ。」
「…そうか。」
それきりシウスは口を閉じてしまう…狙いが読めない…は、俺のセリフだ…シウスはまだ剣を抜いてすらいない…でも、開始の合図なんて無くても分かる…先程からシウスは俺を睨んだまま、微動だにしない…まるで眠って…いや、確かに眠っているのとは違う呼吸の音が聞こえる…その音は勢い良く流れる水よりも、俺の耳には大きく聞こえる…
……剣の柄を握る手を一度緩め、また握り直す…息を吸い、吐く…集中しろ、もう始まっている…少なくともシウスの中では…やるからには無様に負けたくは無い…気合いを入れ直せ…俺たちの距離は今、剣の間合いには無い…俺の剣はもちろんの事、俺のより長いだろうシウスの剣も届かない…だが…油断など出来無い…見る限り、俺なら体感的に三、四步…一気に詰めるから体感的には一瞬…!?
「ウオオオオオオ…!!」
雄叫びを上げたシウスは何時の間にか、直ぐ前にいた…見えてはいた…でも反応出来無かった…言い訳はしない…シウスが空いていた距離を地面を蹴るようにして、一気に飛び、詰めて来るなんて状況を想定してなかったのは俺が悪い。それより今は…!
「オオオオオオ…!!」
今も雄叫びを上げたまま、俺の頭上に振り下ろされようとしてるシウスの剣を何とかしないと…アレはヤバい…!多分寸止めなんてシウスはするつもりも無い。どうにかやり過ごさないと俺は今ここで確実に死ぬ!
「クッ…!ハアアア…!」
ソードスキルをぶつける要領だ…俺なら出来る!絶対に!
「…今ので決まったと思ったがな…やるじゃねぇ…おお!?」
俺は振り下ろされるシウスの剣の側面に自分の剣を叩き付け、逸らす…そのまま剣を捨て、自分の上体を逸らし、飛ぶ…そして足を一気に振り上げた…やけに軽い感触と共に、シウスの身体が持ち上がるのが視界に入った。
体術ソードスキル…弦月。後ろに向かって身体を逸らしながら跳び、相手を蹴り上げる技…完全初見だと躱せる奴は少ない筈なんだが…
「…痛てぇな…」
シウスが顎を擦りながら両の足でしっかりと地面に着地する…もしまともに当たっていたならよろけたり位はしても良い筈…つまり…
「…俺の蹴りに逆らわず、跳んだ、か。」
「…基本だろ?見覚えの無い技なら尚の事、モロに食らってやるわけに行かねぇ…んじゃ、仕切り直しと行こうぜ?」
初見でそこまでやられたらもう何も言えないな…俺は溜息を吐きながら地面に落ちている剣を拾った…