「オラアァァァ!」
「クッ…!」
シウスが横凪に振るってくる剣を跳んで躱…んなっ!?
「ああああッ!」
咄嗟に足を振り上げた…上昇位置が更に上がり、俺の頭が下に行き、視界が逆さまになる…横に振り切られた筈のシウスの剣は途中でいきなり上に跳ね上がった…もしあのままだったら、俺の足は持って行かれていた…!
「っ…ハア…ハア…」
無理な体勢だったせいか、着地時の衝撃が足だけでは上手く殺し切れず、尻を地面に着けて座り込む。体力はまだ残っているが、呼吸は荒くなっていた…
「これも躱すかよ。」
「…足を斬られるだけならまだ容認出来るが…無くなるのは御免だな…」
剣を持っていない左手を地面に着け、立ち上がる。
「…続けるぜ。」
「ああ。」
「まさか一太刀も浴びせられないとは思わなかったぜ…」
メトークス山を出た所で横を歩くシウスからそんな言葉が聞こえ俺は溜息を吐いた。
「…冗談じゃない。お前の剣は全部必殺の威力だった…一太刀でも受けてたら俺が終わってたよ。」
「へっ…お前だって俺の喉を突こうとしたじゃねぇか。」
「…先に人の頭を割ろうとしたのはお前だろ。」
筋肉の鎧に包まれたシウスを倒すには他に選択肢は無かった。華奢な俺は一撃でも食らえば死ぬ…シウスの息の根を止める以外に無かった。結局出来無かったけど。
「…何も言わないんだな。」
「ん?」
「アレは模擬戦の域じゃなかっただろ?」
「…いきなり仕掛けて来たお前がそれ、言うか?」
足を止め、シウスに目を向ければ軽口を叩いてた割に顔は真剣そのもの。…こいつずっとこんな顔してたのか…
「相手がその気なら俺も躊躇わない…それだけだ…それに…」
「何だ?」
「…命を賭けなきゃ見えないものもある…だからお前も本気で仕掛けたんだろ?」
「…ああ。」
「…答えは出たか?」
「…いや…だがヒントは貰ったぜ…お前はどうだ?」
「俺は…何も。」
命を賭けての戦いは初めてじゃないから…
「そうか…」
そう言ってシウスは上を見上げる…俺も頭を上げた。
空には満天の星が瞬いている…
「綺麗だぜ…そう思わねぇか?」
「そうだな…ただな?」
「何だ?」
「…んー…お前がそういう事言っても正直、まるで似合わないから、止めた方が良いと思うんだ。」
シウスが頭を下げ、俺に目を向けた…
「…違ぇねぇな。」
そう言って笑うシウスに俺は呆れていたが…多分…俺も笑っていただろう…やれやれ…本当に面白いよ…こいつは…あんな事の後なのに嫌いになれない。
宿に戻ってみれば店の前に顔を顰めたイリアさんが立っていた。
「何処行ってたの?」
シウスと顔を見合わせる…こいつに喋らすと面倒か…顔をイリアさんの方に戻す。
「「…野暮用だ(ですよ)」」
シウスと言葉が重なり、二人で笑う…イリアさんの怒鳴り声が響いたが、俺は無視して、シウスと二人で笑い続けた。