「なあ、長い話になるのか?なら、一旦戻っても良いか?煙草…!とっ。……こいつぁ巻き煙草かい?随分洒落たの吸ってんだなぁ?」
俺は渡された煙草の箱をしげしげと眺める……へぇ……
「吸わないなら返せ。」
「いや?有難く頂戴しよう。」
巻き煙草を箱から一本抜き口に咥える。
「…火はあるかい?」
聞くと今度はマッチの箱が飛んで来た……一々投げるなよ。
「……」
煙草に火を着け、吸ってみる……美味い。
「堪能してないでさっさと返せ、糞餓鬼。」
俺は煙草の箱とマッチ箱を指に挟みそれぞれ違う方向へ投げてやったが奴はその場からろくに動かず片手で難無く回収した。
「…んで?志々雄がどうしたって?あいつは死んだんじゃねぇのかい?」
俺は奴との邂逅を思い出す。……噂には聞いてたが会ったのはあれが初めてだったな……
「何故貴様がそれを知っている?」
「…そりゃああいつが追われる時に出くわしたからだよ。気になって跡をつけたら最終的に油を撒かれて火をかけられたあいつがいるじゃねぇか。……あれで生きてる奴が居たら御目にかかりたいねぇ……」
「奴は生きている。」
「…!へぇ……」
噂以上にしぶといな。
「志々雄真実が生きているのは分かったよ。で、俺に何をさせたい?」
「……志々雄真実の殺害の協力だ。」
「あんた警官だろ?てめぇでやりゃいいじゃねぇか。あいつは悪党で有名だったからな、どうせあんたまだ悪・即・斬とやらを掲げてんだろ?」
煙草を地面に吐き捨てる……こいつしばらく火は消えねぇのか?……念の為草履で踏み付け消す。
「お前は強い剣客と戦えればそれで良かったんじゃないのか?」
「昔の話は止めてくれや。俺ぁ今はしがない傘職人だぜ?……大体あいつが生き残ってたってどうせ寝たきりだろ?」
「あいつは健在だ。何人も警官が斬られてる。」
「斬り合いから遠ざかった俺が言うのも何だけどよ、今の警官はそんなに強えのかい?」
「結局来るのか?来ないのか?」
「来なかったらしょっぴく…!いや……この場で俺を斬るかい?」
「……」
「…そう殺気を込めないでくれ。血が騒いじまう……分かった……と、言いたい所だが……無理だな。」
「…何故だ?」
「……武器がねぇ。」
「匕首はどうした?」
「……とっくの昔に質入れしたよ。もう帰っても…!あん?」
「そいつを使え。」
鞘付きの短刀、ね。……俺の持ってたモンとは違うが握るとしっくり来る……
「良いのかよ?廃刀令の御時世だろ?」
「俺が許す。使え。」
「へいへい。んじゃ、軽く準備して来ても良いかい?何せ突然の誘いだったから店に休業の札も掲げてねぇのよ。」
「構わん。そもそも貴様以外にもう一人連れて来る予定だからな。」
……もう一人?
「へぇ。そいつぁ、誰だい?」
「……抜刀斎だ。」
「…!緋村?あいつ生きてやがったのか!?」
この中では一番早死にしそうに見えたがな。
「あんたあいつを殺したがってだろ?何で見逃したんだい?」
「……貴様には関係無い。……さっさと行け。猶予に三日やる。」
そう言って奴は踵を返す……俺がこのまま逃げ出すとは思わねぇのかねぇ……まあ……
「こんな面白い話に首を突っ込まない訳ねぇけどな……!」
俺は我が家に足を向けた