「おらどうしたよ!?お前らそんだけ頭数いて男一人殺れねぇのか!?」
逃げて行く連中を壁を蹴り天井を走り追いかけ、仕留める……無抵抗の奴を殺すのは本来趣味じゃないがこいつら誰一人逃がすつもりは無い。
「ヒィ!助けて「逝け」……」
「…しかし下手だね、どうも……」
あの頃と何も変わってない。せっかくの暗殺技が俺は暗殺に使えていない。……俺はただ殺すだけ。……殺人鬼としては相応しいか。
「しっかし、誰だ?火の始末をしてねぇのは……」
事務所は今炎に包まれている。さっさと逃げたいが……
「……そこか。」
俺はさっき仕留めた獲物の懐から出した短刀を障子戸に向かい投げる
「…ぐはっ!」
「……命中。」
何処へ行っていたのかは知らんがさっきから事務所に人が何人も戻って来てやがる……警官かと思えば大半がどう見てもここの人間だった。
「もう少し粘るか。憂いは断っておきたい。」
こうなったらとことん人間狩りを楽しませてもらうとしよう……!
「無為。……話にならん。」
眠い。……飽きて来たな、こいつら弱過ぎる。
「…そろそろ逃げ……いや、もう遅いか。」
外を大量の人間の気配……野次馬と火消しの連中と警官だな。
「…遅い。……仮にも暗殺技巧を身につけた者をその程度で殺れると思うな。」
死角から短刀で斬りかかって来た奴を躱しさっき回収した短刀で刺し、捻じる。
「悪いが留めを刺す暇は無い。まあ運が良ければ助かるだろうよ。」
俺は事務所を後にした。
「…何とか撒けたか。」
あの場は警官より火消しが多く、幸い素人しかいなかったからあの場を離れるのはそう難しい事じゃない……ただ……
「何であんなに警官がいやがる……!」
まさか出て角を曲がった所に警官がいるとは……!俺の格好は血塗れ。さすがに見つかればただじゃ済まん。
「…ふいー。びしょびしょだな。」
血のついた着物を川で洗い、ねぐらに帰って来た。
「…香は何処だ…?」
血の匂いを消さないとならん。……俺はあの頃はもちろんの事、今も風呂に入るのを面倒くさがって香油を良く身体に塗りたくっている。
「…ああ。あったあった。」
俺は香油を身体に塗り始めた……
「…起きろ、糞餓鬼!」
「…!待て待て!今起きるから刀を退けろ!」
「…!貴様昨夜は何をしていた?」
「ん?昨夜なら酒場で軽く引っかけて、帰りに絡まれて少し喧嘩をしただけだが?」
「…本当に単なる喧嘩か?」
「誓って言おう。……大体血の匂いが気になるから香油を塗ったんだが……気になるか?」
「俺たちはその匂いを嗅ぎなれているからな。」
「…へぇ。」
「まあいい。さっさと支度しろ。」
「……緋村は来るのか?」
「……」
「ふ~ん。まあいい。少し待っててくれ。」
俺は戸棚から用意した荷物を出した……