「…ところで、何処に行くんだ?一応旅支度はして来たが?」
「…京だ。」
「…!そりゃまた懐かしい……つか先に行ってくれや。俺が旅支度してなかったらどうする気だったんだよ?」
「知るか、阿呆。大体貴様の持ち物等、せいぜいその懐の短刀と煙草入れ位だろうが。」
「……んまあ、そうだけどよ……。」
「しかし貴様、短刀を捨てた割にその召し物は捨ててなかったのか?」
「……この御時世に幾ら警官だからってサーベルでなく刀刺してるあんたに言われたかあねぇよ。」
今の俺の格好は幕末時代の暗殺用の衣装だ。……真っ黒な着物と足袋……頭巾は被ってねぇがな。今更顔を隠す必要は無い。
「…サーベルは強度が足りないからな。それだけの話だ。」
「……そうかい。その癖どうせそいつは無銘なんだろう?強度が気になるならもっと良い刀使えや良いのによ……そいつ三日前に刺してたのと違う刀だろ?錆び付いているのかと思えば緋村は中々良い勝負したらしいな。」
「……貴様と無駄話をするつもりは無い。」
「良いじゃねぇか。どうせ先は長いんだ。少しくらい…!……相変わらず短気だねぇ。」
「……貴様は何も変わって無いな。……悪・即・斬は我々共通の正義だ。思想は異なっても、な。……だが貴様は違う。ただ快楽のままに人を殺した鬼だ。」
「で?志々雄も同類だ。だから俺を呼んだんだろう?鬼には鬼って訳だ。」
「……余計な事をすれば直ぐに斬る。」
「へいへい。指示には従いますよって。……なぁ一つ我儘を良いか?」
「……何だ?」
「緋村の所寄っていっても…!最後まで言わせてくれませんかねぇ?」
「…道草を食う暇は無い。」
「良いじゃねぇか。あんたどうせ緋村と殺し合いしたんだろ?卑怯じゃねぇか。俺だって今の緋村の実力を試してみてぇ……」
「……」
「…へぇ。ここが神谷活心流道場ねぇ……あんたそんな所で何してんだ?」
「……貴様一人で勝手に行って来い。手短にな。」
……どうせやらかしたんだろうな……色々と。
「……おう。んじゃ行ってくるわ。」
「ん?あれは…!」
道場から人目を気にしつつ外に出てくる奴が……
俺はその後ろ姿に懐から抜いた短刀を振り上げた……
「…!お主は……!」
「よう緋村!元気だったかァ!」
……成程。奴が失望したのが良く分かる……これは抜刀斎じゃねぇ……だがこの腑抜けは齋藤に手傷を負わせてる筈、……嗚呼っ!駄目だ。試したいだけの筈なのに抑えられねぇ……!
「さあ…!殺し合おう…!」