彼に初めて出会ったのはそう、まだはやてちゃんが機動六課を設立する前…私が戦技教導官としての自分の姿を幾度も模索した末、漸く自分なりのやり方を見付けてすぐの頃。
「…うん、大丈夫…ちゃんと教えた事、出来てるよ。」
「ありがとうございます…なのはさんのお陰です。」
その、言い方としては良くないんだろうけど…後に出会う子たちに比べたら決して優れた素質があるという程じゃなかった…ただ、それでも…
「すみません…今日も遅くまで付き合っていただいて…」
「良いんだよ、気にしないで。私としても熱心な方が教え甲斐が有るしね…」
彼はあの頃見てた他の誰よりも努力を続ける方だった…だから、いつもギリギリまで彼の練習に付き合ってた…頼られるのはやっぱり嬉しいしね…まぁ、当時は彼一人を見てる訳じゃなかったから本当は彼ばかり注目してたら駄目なんだけど…
「そう言えば君は執務官志望だっけ?勉強の方は進んでる?」
「ええ…まぁ、不安がない訳じゃ有りませんが…」
「私の友人も昔から同じ道を目指して頑張ってるから大変さも少しは分かるよ…かなり難易度が高いんだよね…」
「そうですね…ま、落ちたらその時はその時です…チャンスは一度だけじゃ有りませんから。」
彼は同期の子たちに対して線引きをして、距離を置いてる様に見えていたから…ついついお節介を焼きたくなってしまっていた…とは言え、私と二人きりでいる時は年相応な子供の顔を見せるからね…まぁ、私が安心したくて色々世話をしていた様な気もする…
「今日はありがとうございました。」
「うん、何かあったらいつでも言って来て。」
最終的に教導期間も終了し、さすがに切れるはずだった関係性…でも、結局は私の知らぬところで状況が動き…再び再会する事となる…
「はやてちゃん、この人って…」
「ん?…ああ、優秀だって聞いたからな…何や、なのはちゃん知り合いなんか?」
「うん、以前教導に当たった子なの。」
機動六課にスカウトする予定の人たちのリスト、その中に彼の名が有った。
「…お久しぶりです、なのはさん。」
「本当に久しぶりだね…あれ?あの頃より背伸びたんじゃない?」
「…そうですか?だったら嬉しいんですけどね、何せ向こうではずっとチビチビってからかわれてましたからね…」
確かに彼は男性にしては比較的小柄な方…あの時の彼も初めて会った頃のクロノ君より小さかった様に思うし…うん、でも…
「えっと…うん、やっぱり伸びてるよ…良かったね。」
その後は本当に色々な事があった…私としては彼はずっと教え子のつもりだったけど、著しく成長した彼からは色々教わる事の方が多かった…
…特に、ティアナの事では散々言われた…暴走する前にちゃんと話し合うべきだって…
あの頃、人と関わろうとしなかった彼はもうそこには居なかった…歳上としてエリオやキャロの面倒を見たり、あるいは…悩み続けるティアナとスバルに道を示してみたり、私がずっと心配していた当時の面影はほとんど残ってなかった…まるで、まるでそうしようと自分に強いるかの様に…
「…それがなのはから見た印象なんだね。」
「考え過ぎかな、とも思うんだけど…どうしても不安が拭えないの。」
「…まぁ、ティアナと一緒に私の補佐に付けるつもりだから…しばらく様子を見てみるよ。」
「ごめんね…」
「気にしなくて良いよ…私としても、何か放っておけないタイプの子だし…」
とは言え、その後結局特別問題は起こらず彼はティアナと共に執務官に昇進しフェイトちゃんの手も離れて行った。
……もう彼もティアナも大丈夫。そう、思っていた…
『…なのはちゃん、聞いてるか?』
「!…ごめん、もう一回言ってくれる…?」
「…ちゃんと聞きや?ええか?もう一回最初から言うで…実はな…」
彼が任務中突然消息を絶った、そうはやてちゃんから聞かされたのはそれから一年後の事だった…
「…それで、何か分かった?」
『すみません、なのはさん…』
『私たちもまだ詳しい事は分からないんだ…何か分かったらまた連絡するから…』
ショックは少なからずあった…でも、不思議と心の内でやっぱり…と言う想いもあった…彼はいつか私たちの前から居なくなってしまうだろうと…理由は私にもちゃんと説明出来ないけど…そして…それから更に半年が過ぎ…
「…何をしてるの?」
「なのはさん…今貴女に見つかるのは予定外なんですよ、もうちょっと放っておいて貰えると嬉しいんですけどね…」
「質問に答えて…ここで何をして…ううん、違う…君は、一体何をしたの…?」
教導で向かったとある支部…そこで起きた爆発事故。その現場に、ずっと探していた彼が立っていた…