「軽いな、ちゃんと飯食ってっか?馬鹿息子?」
「…大きなお世話だよ、糞親父。」
「ゲホッ!七夜!人の上で会話してないでさっさと退くでござる!」
「ん?ああ、悪い、ね!」
「グホッ!?」
俺は緋村の身体を踏み台に飛ぶ。さて、空中からならどうだ?糞親父!
「…もう終わりにしようや?なあ、志貴?」
「!…は?」
空中から蹴りの体制に移行しようとした俺の目の前には親父…!?早すぎる!
「…落ちろ。」
「馬鹿な…!」
俺は親父の蹴りを受け、地面に叩き落とされた。
「…ぬぐっ!ぐあっ!」
かなり勢いを付けて落とされた為に咄嗟に蹴りが飛んで来た頭は庇えたが録に受け身も取れずに俺は地面に身体を打ち付けていた。
「無様だな、馬鹿息子?」
「何故殺さない!?」
あの蹴りが全力だった訳は無い。増してや地面に叩き付けられた時点で本来なら俺は死んでる。……また手を抜かれた……!
「あのなぁ…俺は引退したとはいえ元は暗殺者だぞ?金貰えないのに殺す理由があんのか?」
「チッ!その余裕後悔させてやるよ……!」
俺は何とか立ち上がり短刀を構え……
「…七夜、お主が父親と因縁があるのは分かる。が、ここは拙者に譲って欲しいでござる……」
「…チッ。あ~あ……もう好きにしろよ…。」
俺は地面に座り込んだ。
「…黄理殿、もう一度頼むでござる…」
「お前も懲りねぇなぁ……良いだろう、終わらせてやるよ。」
緋村は抜刀術の構えに入りその場から動かなくなる……おいおい。親父が動かなかったらどうする気だ?増してや緋村は親父の動きに着いていけていない……
「…そう来るのか。良いだろう、引導を渡してやる。」
親父が構え……!
「…!」
「…終わりだ。」
緋村は鯉口を切る所までは行った……!ほう。俺でも辛うじて見える程度だったがあいつは見えてたのか。……だが……
「…緋村、剣士が刀を失っちゃあ終わりだろ?」
「……」
今緋村が持つ刀は柄と鍔の部分以外存在しなかった。残りは鞘の中。……神業の域だな。…こいつに勝てる気がしなくなって来たぜ……
「…かたじけない。貴方のおかげで少し霧が晴れた。」
「おう。役に立てたなら良かったぜ。」
「…機会があればまた手合わせ願いたい。」
「…気が向いたらな。まあしばらくはここにいる。」
「…行こう、七夜。」
「…ふん。おい、糞親父。次は仕留める。」
「…ああ。期待しないで待っててやるよ。じゃあな、志貴。」
俺は緋村の後に続き歩く。…ん?あれは……
「…帰るのか、坊主?」
「ああ、出直す。ボロボロなんでな。」
「そうか。何時でも来い。陶芸で良ければ教えてやる。」
「…師匠……」
「……」
すれ違いざまに声をかければ俺には反応したのに弟子の筈の緋村は無視……露骨すぎるだろ。
俺は動きを止めた緋村の背中を軽く小突き先を進むよう促した。