執務官を目指した理由は一つ…犯罪者に近付く事が出来るから…向こうでの私は単独行動が基本でしたが、それでも…協力者や出資者を募らないと活動出来ない以上、売り込みは必須だった。
あちらでは意外と裏社会への入り口は多く、それは…仮に学生や普通の社会人で有っても少し見方をずらすだけで容易に堕ちる事が出来る程に緩かった。
…が、ここでは話が少し違う。表の側からではほとんど裏に繋がる足掛かりが無い。その点で言えば、多少動きが制限されたとしても管理局に所属したのは正解だったと言える…
「…お久しぶりです…ジェイル・スカリエッティ。」
「久しぶりだね…と言っても、あの時の戦いで再会は果たしているがね…」
その言葉に私は微笑んでみせる…
「すみません…あの時はまともに挨拶が出来ず「気にする事は無い。あの日、君は信念を持って私の前に仲間たちと共に敵として立った…それだけの話だろう?」…ありがとうございます。」
「…で、ここに来たと言う事は…あの時の質問の答えを貰えるのかな?」
そう、今日私はその為にここに来た…
「…漸く目処が立ちました、私は動こうと思います…今度こそ、貴方と共に…」
あの日彼に手を差し伸べられた時、私はその手を掴まなかった…まだ管理局でやる事が有ると思ったから…それでも、全てが終わった今なら。
「…嬉しいよ…けど、惜しいね…その返事はもっと前に聞きたかった…」
「…つまり?」
「私の方はもうそうする理由が無い、と言う事だよ。私は他に大切な物が出来てしまったからね…」
「…彼女たち、ですか?」
「…正確には彼女、だ。他の皆の事は今も案じているが…私に最後まで付き合いたい、そう言ってくれたのは彼女だけだからね…」
「…そうですか…いえ、分かりました…せめて貴方を再び敵に回さずに済んだことを喜ぶ事にしますよ。」
私は椅子から立ち上がった…もうここに用は無い。
「…最後に一つ、聞いても良いかな?」
「…どうぞ。」
既に背を向けていた私に声が掛けられる…振り返らずに答えた。
「…君にももう何が大切なのか分かっている筈だ…その上で聞きたい、何故…今になってなんだい?」
「……さぁ、もう私にも良く分かりません…ただ、それでも…一度そう決めた以上、今更やめる事は出来ません。」
「止められなかったか…」
最初に彼の事を知ったのはほんの偶然だ、ただ彼を見た時…一目で分かった…彼は私の同類であると。
「…まぁ、元より私には無理だったかも知れないね…」
彼と初めて直接顔を合わせたあの日…私にはすぐに二つの可能性が見えた。
即ち、彼とはとことん敵対するか…あるいは生涯を共に出来る親友になるか、そのどちらかしかないのではないかと…
結果として私はフラれ、今はこうして塀の向こうの住人となっている…あの時、彼をこのまま帰せば面倒な事になる、そう言う娘たちを宥め…私は彼に何もせず帰した…少なくとも雌雄を決するのは今じゃない、彼もそう思っているだろうと。
まぁ、親友や同士にはなれなくても機動六課が設立されるまでは彼は何度か私の所に来ていたがね…娘たちともいつからか打ち解けていた…その為に無理をしているのは見ててすぐに分かったがね…私は人でなしかも知れないが、私から見れば彼はそれ以上だ…彼には人を慈しむ心が欠けている。
「…それでも、最後の時と今…あの頃に比べたら明らかにマシになっていたかな…」
フッ…私にはもう手を出す気は無いし、そもそも何かを出来る立場には無いが…せめて先達として一つ言葉を贈らせて貰おう。
「…迷い子よ、君の人生に幸あれ…」