「……俺の親父は料理人だったんだ……」
彼女の墓の前で黄昏ていた奴に声をかけると奴からちょっと聞いてくれと言われ飛んで来た第一声がこれだ……
「……何故今そんな話を?」
「……取り敢えず聞いてくれ。俺がお前に会う前の話だ。」
「……俺の家は定食屋でな、物心着いた頃から母親のいなかった俺はおふくろの味って奴を知らない。俺の原点は親父の作る飯だったんだ。」
「……俺は勉強が出来なくてな、他の兄弟たちが俺を置いていくのを指をくわえて見てるしか無かった。……幸い兄貴も弟も親父の店を継ぐ気は無かったみたいだからな、将来は俺が店を継ぐもんだと思ってた……」
「……中学三年の時だ。俺は親父と大喧嘩した。……俺は高校なんて行かず親父の元で修行して将来店を継ぐつもりだったんだ……だが親父はどれだけランクが低くても良いから高校に行けって聞かなかった……」
「……何なら専門学校でも良いと言う親父に俺は言った。あんたが俺に教えてくれりゃすむ話じゃねぇのかってな。……それに対しての親父の返事が……」
「……何と言われたのかね?」
「……店は老朽化が激しくもう持たない。それにここは区画整理に入っており立ち退きを言われている、だ。」
「……」
「……ガキだったのさ、俺は。結局俺と親父の話は平行線を辿り俺はその晩荷物を纏めて店を飛び出し家出した。」
「……まさかと思うが君は……」
「……俺はそれから親父には会ってない。俺は家を出た後親戚を頼り日本各地を転々とし後に海外に渡った……んで手っ取り早く生活費を稼げる手段として外人部隊に入った。」
「……君は何をしたかったのかね?」
「……今となっては分からん。当時俺は若かったからな。身一つでも何とかなると勝手に思っていたのさ。……何の根拠も無いのにな。」
「……親父さんに会う気は無いのか?」
「……去年亡くなったらしい。新聞に載っていた。」
「……」
「……衛宮、俺はどうすれば良いんだろうな?」
「……君は断ったが……迷っているのかね?」
「……この村に留まるのも悪くない……そう思ってる俺もいるのさ……」
「……私は口を出さない。自分で決めたまえ。」
「……めんどくせぇなぁ……」
「……そろそろ日も暮れる。今日はあの家に泊まることになった。」
「……なるほどな。まあ確かにこの村に宿は無いからな。……うわぁ行きづれぇ……」
先程あんな態度を取っていたからな……
「……自業自得だろう?さぁ行こうか?」
渋々着いて来る奴を見て今も十分ガキじゃないかと思ったのは黙っておく事にしよう……