「良かった…何とかなりそうね…」
持って来た自分の武器を下ろしながら胸を撫で下ろす…鉄製の門を開けて入った先は庭園だった…ろくに手入れこそされた形跡こそ無いものの、その広大な庭はそういう物を見慣れている筈の私でさえ見事だと感じていた…
きちんと手入れがされていればもっと素晴らしかったに違いない。そんな事を考えていた私が思わず狼狽えたのはその庭園を歩き始めてすぐの事だった。
「っ!何!?」
足元の地面から手が突き出して来て思わず飛び退く…一体何が…!
「嘘でしょう…!?」
手と共に頭が出て来て、次に肩、そして胴体部分が…
「っ!はあ!」
咄嗟に手に持っていた物を突き出す…一見すると短い杖にしか見えないそれの先端が伸び、化け物の頭に当たった。
「…案外脆いのね…」
化け物の頭はそれだけで吹っ飛び、胴体の動きも止まる…横切り、飛んで行った頭の方へ向かった…
「…何これ…!」
それはどう見ても嘗て人間だった物だった…そしてその腐敗した顔を見る限り絶命してかなりの時間が経つ事を示していた。
「…ゾンビ…本当にいるなんて…」
思わず前に見た映画に出て来たクリーチャーの名前が口から飛び出す…
「…考えが甘かった…こんな物までいるなんて…」
さっきは恐怖の余り思わず手にある杖を振ったが、人型である以上、今の心境のままではもう戦えないかも知れない…それにこの杖では…
「持って来て良かった…本当に必要になるなんて思わなかったけど…」
何時も着ているドレスのスカートをたくし上げ、足に手をやる…
「……この杖よりはマシね…」
私はそれを前方に構える…黒く、無骨なその物体は色々な呼び名があるけど…一番有名な言い方は拳銃だろうか…?
「…最も弾は余り無いから…少なくともさっき見た化け物程度には使えないわ。」
この杖の先端が当たっただけで終わる程には脆いのだ…後は私自身の問題…
「…こんな所では止まれない…」
銃を足に着けているガンベルトに仕舞うと、再び杖を握り、私は歩き出した。
「安堵している場合じゃないわ、先に進まなければ…」
庭園を歩いている最中出て来たゾンビを殺し続け、漸く城の入口へ…
「跳ね橋…本当に城なのね…」
跳ね橋はまるで入って来いとでも言うように降りたまま…上がっていたら入れないから好都合だけど…
「これ程の城が突然出現して、一般的にはほとんど認知されてないなんて…」
ここ、実質ルーマニアの一部であるトランシルヴァニアは吸血鬼ドラキュラ伝説が色濃く残り、人々は実際に信じている…外の国にも伝わっているものの、それが事実だと思っている人は何故か誰もいない…
「…気にならない訳じゃない…でも、理由なんてどうでも良い。私が終わらせるだけ…」
私は城内に足を踏み入れた…