彼に出された料理を口にする…ふむ…
「…美味いな。」
「…良かった。こっちは軽く冷や汗モノでしたよ…」
「そう謙遜した物でも無いさ。…客に出すのはまだ少し早いかも知れないが。」
「これは手厳しい。」
味は悪くないが若い…作りが多少荒い…そう思い、アドバイスをしようと考え…改めて口を開いた所で動きが止まる…私は何をしようとしてるんだ?彼が本気で料理人でも目指してるならいざ知らず、求められてもいないのにアレコレと口を出すのは筋違いだ。
……私自身もこの若さで既にここまで出来る人間に偉そうに言える程腕があるとは思えん…彼なら自分でステップアップして行く事だろう…私の助言など確実に不要だ。
「何処ら辺が問題でしょうか?参考までに聞かせて貰えませんか?」
……彼の方から聞いて来るとは…う~む…
「…いや、君は自分で気付いた方が良い。」
「そうですか?」
「ああ言ったが少なくともある程度の域には既に達している…後は修練あるのみと言った所だ。…最も、趣味の範囲ならこれで十分過ぎる程だが。」
「成程、そうですか。」
彼の一言と共に自然と話は終わりになった。ちなみに後からやって来たルヴィアにも味は好評だった…ただ、彼女は色々アドバイスした様だが。
三人で最後の客を見送り、片付け、店の鍵を閉める。バイト君と別れ、ルヴィアと二人で歩く…近頃はホテルと自宅のどちらかを行き来する羽目になっている…イリヤの事を考えれば心配し過ぎる、という事は無いから仕方無いが…さすがに面倒だな…
「彼の料理は中々でしたわね。」
「そうだな。」
ルヴィアから話を振られ、特に考える事も無く相槌を打つ…まぁ否定する理由も無いのだか。
「…皮肉るつもりは無いが、君はあまり料理をしない様だが…」
「別に出来無い訳ではありませんわ。今の所披露する理由も特に無いので。」
確かに。あの店は結局、料理出来る人間が二、三人もいれば事足りる…彼女の腕がどの程度かは分からんが、彼女が積極的に厨房に立つ理由も無い…今日はスペースも当然あったが、彼女からは特に言い出さなかった。
「…リンの具合はどうですか?」
急に話が変わったな…
「…さっきイリヤからメールがあった。熱が何度か上下していて中々平熱に戻らないらしい…意識はある様だが、危なくて明日も店には行かせられないそうだ。」
「…相当タチの悪い風邪の様ですわね…」
「そうだな…」
そんな話をしながら二人で深夜営業のスーパーに立ち寄り、イリヤがメールで書いて来た物をカゴに詰めて行き、精算を済ませ…
「私も出しましょう「有り難いが、現金は持ってるのか?」…カードなら。」
「…一応カードは使える様だが…」
そうなると二人で分けて払うのは不可能だが…
「では、ここは私がそのまま払います「しかしそんな訳には」リンは私の親友です…彼女の為にお金を出すのは可笑しいですか?」
そういう言い方をされると断り辛いな…
「分かった、なら君に任せよう。」
彼女がカードで精算を済ませ、カゴを持って…
「待ちたまえ。さすがにそれは私が運ぼう。」
「ではこちらを。」
彼女はさっさと袋に詰め二つの袋の内、傍らを渡して来る…両方持とうと言ったがやんわり断られた…やれやれ…本当に私の周りの女性は強い者たちばかりだな…