……正直に言えば一目でいい女だと分かった。
一見儚げで押しの弱そうな雰囲気。だが、実際は確固たる自分を持ち芯はしっかりしていた。
一時の逢瀬の相手ならともかく伴侶にするなら結局こういう女が良い。
……惜しむらくはまだ若いってことと俺が生身じゃないこと、……後は宝具を見せた瞬間に正体がバレ、俺のファンとか言って足が動かないハンデをものともせずに腕の力を頼りにこっちに物凄い勢いで這いずってこなきゃ完璧だったな……
……気に入ったとは言え状況が状況。気の利いた口説き文句すら並べられないまま別の女に付きっきりという不義理を犯し、かつ野郎の相手をし、そのバカをボコッてきてみりゃ既に決着は着いておりろくに会話も出来ないまま強制退去、だ。
……まあいい。次は俺の真骨頂であるランサーで呼んでもらおう。……術士はもう懲り懲りだ。なんて、呑気なことを考えていた。
……次に呼び出せれてみりゃどうだ……俺は愕然とするしかなかった。
……俺の気に入ったその女が青白い顔をしてガリガリに痩せ細り、焦点の合わないその目を必死に俺に向け、笑ってたんだ……
……俺はマスターへの挨拶もそこそこに何があったのか問いただしちまった。
こんなに取り乱したのは生前以来だろうよ。全く罪作りなマスターだぜ。
そして今……
「……あの……クーさん?……そうやってずっと見詰められると恥ずかしいんですけど……?」
「……ん?…おう。すまねぇ。あんま綺麗なんで見とれちまったわ。」
……棒読みにならないよう気を付けたつもりだ。そこにあったのは肌の張りを失い若くして既に女のピークを過ぎつつあるマスターの身体だったからな。……何処ぞのババアならともかくどんな理由があれ若い女を貶すほど俺は鬼畜じゃねえつもりだ。
「……そうですか。ありがとうございます……」
……どうも俺の気遣いは無用だったようだ。
「……なあ、嬢ちゃん、本当に良いのか?ルーンを直接肉体に刻んだ方が確かに効果はある。……だが刻んだルーンは要は刺青と同じだ。一生残るんだぞ?」
俺は何度目かも分からない問いを繰り返す。どうせこの嬢ちゃんがなんて答えるかなんて分かり切ってんのによ……
「…はい。お願いします」
さっきから繰り返される答え。……気に入らねぇ。
……別に元々戦士として生きてきた女や戦場にいる娼婦なら俺もとやかく言わねぇ。
……俺の時代には敵を倒す毎に強さの証として刺青を刻む女や客の趣味で刻まれる女なんてざらにいたからな。……つーか刻まなくても元々戦場で付いた傷が数え切れないほどあった……だがな……
「……何でそんな簡単に答えが出せる?一生残るんだぞ?現代の皮膚移植とやらでも完全に消えるかわかんないんだぜ?」
……戦場にも出たことのなかった女が必要だからってだけで身体を傷付けることをあっさり承諾出来るのが分からねぇ……疑問に思うより先にイラついてきやがる。
「……今の私は満足に身体を動かすことも出来ません……それじゃあ役に立てないですから……身体にルーンを、刻めば動くようになるなら……お願いします。」
……違う。俺はそんな事聞いてんじゃねぇ……この方法は対処療法にしても最悪だ、それぐらい分かる……今ならあの優男の無力感に共感できるぜ……つーかそれ以上にやっぱ気に入らないし解せねぇ……
「……俺は意気込みを聞いてんじゃねぇ。理由を聞いてんだ……さっさと答えな、何でテメェはそこまで出来る?」