「……朝か」
私は枕元にあるスイッチまで力の入らない手をなんとか動かし押す
「……先輩。おはようごさいます……」
マシュが入ってくる。私は返事を返す
「……おはよう。マシュ……」
マシュが水の入った洗面器からタオルを取り出す。
「……身体、拭きますね。」
「……うん。」
マシュは無言で私の身体を拭いていく……
「……先輩。」
「……何…?」
「……何でもないです……ごめんなさい……」
彼女の手は膝下に掛かっていた。その先には……
「……大丈夫、だよ、マシュ……」
その先は何もなかった。
……クーさんにかけてもらったルーンは一週間で効果が切れた。そのまま意識を失った私は高熱を出した。
医務室にマシュが運ぼうとしたときとんでもないことに気がついたそうだ。
……私の足は爪先からふくらはぎまで腐り始めていた。
ロマニさんやサーヴァントの皆が手を尽くしたがどうにもならず私は意識のないまま足を切断された。
三日間高熱で生死の境をさ迷った私はやがて三日目の夜中に目を覚ました。
……違和感にはすぐに気付いた。一応手で触れて確認しようとしたが……動かなかった。
その後ずっと側に付いていたマシュが目を覚まし、ロマニさんと代表としてクーさんを呼んできて事の顛末を聞かされた。
……不思議と衝撃は少なかった。……土下座して床に頭を打ち続けるロマニさんにドン引きしたせいもあるかもしれないけど。
……何にしてもロマニさんは私の命を救ってくれたのだ。責めようとも思わなかった。
クーさんには予定より早くルーンが切れたことを謝られた。……気にしてないとしか返しようが無い……。
何より私のためにずっと頭を下げ続ける二人を見る方が申し訳なかった。
その後の検査で私の腕はもう動かないことが分かった。
再び土下座を始めそうになるロマニさんを制す
「……前に、言った、通りです……。私は、感謝することはあっても、責めたりはしません。……逆に人理復元の出来ないまま……私が死ぬことの方が、申し訳無いくらいですから……」
……あのときは混乱も多少あったとはいえもう少し言い方があったのではないかと思う。
あれ以来ロマニさんは私を避けるようになった。
ダヴィンチちゃんが怒ってたけど私はロマニさんを憎めなかった……
「……先輩?車椅子に乗せますね?」
「……うん……。」
マシュの声が聞こえ我に返る。よく見れば着替えも済んでいるようだ……車椅子に乗せられた私の頭に電極が取り付けられる。
……私の腕が動かないことが分かった後ダヴィンチちゃんは私の脳の電気信号を読み取って自動で車椅子を動かす機能を付けてくれた。
……ホントダヴィンチちゃんに頭が上がらないなあ……
「……行きましょうか、先輩」
「……うん。」
私の思考に反応し車椅子が前に進む。……皆が言う。もう休めって。でも私は決めてる……
……この命尽きるまで私は止まらない、止まれない。
それが、私がもう一人の自分とした約束であり私の譲れない思いだ……