部屋のドアを軽く叩いた。
「……先輩?入りますね。……おはようごさいます。」
……返事は返ってこない。少し寂しいけれどもう慣れてしまった。
「……今日は少し顔色が良いですね、先輩……」
「……」
……少し身動ぎした気がする。もし聞こえていて反応してくれたのだとしたら嬉しいですね……
……少し前から先輩は声をかけても、揺さぶっても起きなくなり完全な寝たきりになってしまいました……
時折うっすら目を開けているときもありますが基本的に意識は無いそうです……
「……先輩?身体拭きますね?」
先輩の服を脱がす……あまりの酷さに一瞬目を背ける……先輩の身体はもうほとんど皮膚と骨だけしか残っておらずその皮膚も爛れてひび割れだらけ。とても若い女性の身体とは思えません……
「……」
……力を入れすぎないようにゆっくりと拭いていく……
「……先輩?髪梳かしますね?」
先輩の髪はもうゴワついて普通にやっても櫛が通らないので軽く霧吹きで濡らしてから櫛を入れます……
「……」
ある意味この時間が一番辛いかもしれません……艶のあって明るい色だった先輩の髪は今ではくすんだ白色ですから……
「……はい。終わりました」
私は起こしていた先輩の身体をベッドに再び横たえる
「……さてと。それじゃあ今日は何から話しましょうか?」
……最近の私はあまり先輩の所に顔を出せていない。
先輩が目覚めなくなって以来カルデアでは一命をとりとめた他のマスター候補の人たちの治療に集中し私はその手伝いに回っているからだ……
「……それでですね……」
話は尽きない。……サーヴァントの人たちは基本的にピークの状態で固定されて召喚されますが……それはあくまで能力の話。日々何かしら騒ぎを起こしていることが多々あります……楽しいです……忙しいだけなら気が滅入ってしまいますから……ドクターも胃薬の量が増えたと愚痴りつつも何処か楽しそうです……その日常に先輩が居ないのが残念で仕方ありませんが。
「……先輩、昨日もサーヴァントの方が去って行かれました……」
楽しいことばかりではない。最近はサーヴァントの方たちが契約破棄を申し出てくることが多いのです……
……その理由を皆さん多くは語らないのですが……理由は何となく分かります。何せ座に帰っていく人たちのほとんどが古参の人たちですから……
「……先輩?貴女は皆さんの役に立てないと良く嘆いていましたが貴女はこんなにも皆さんに好かれていたんですよ……?」
「……」
「……そろそろ時間です。先輩、また来ますね?」
先ほどまで座っていた席を立ち椅子を隅に避ける。背を向けドアの前に来たところで振り向きいつものように会釈をしようとして……
「……先、輩?」
我に返ったときにはもういつもの眠ったままの先輩の姿……でも、私の目には一瞬だけですが確かに先輩がこちらに笑顔を向けているように見えたんです……
一話抜けてた(焦)