「では、ごゆるりと…あ、御用がありまちたらアチキか、従業員に何でも声をかけてくだちゃい。」
……この場合の声をかけてください、は介助してくれるって意味なんだろうね…あれ…?でもここの従業員ってさっき見たけどデフォルメされた丸っこい雀でちょっと私の介助には無理があるし…まさか…女将自ら…?
「そんな…悪いですよ…」
見た目子どもの彼女に私の介助をさせるのもそうだけど女将、という事は色々忙しいのは間違い無いのだ…さすがにそんな事をさせる訳には…
「お客ちゃまに満足ちて帰って頂くのがアチキの喜びでち。」
……色々言われて結局押し切られてしまった…うん、何時までいるのか分からないけど、あまり手間をかけさせないようにしよう…まぁそもそも…
「……」
私は自分の着ている浴衣を見る…部屋に案内されるなり、これを着せられ、それに全く抵抗しなかったんだから今更ではあるんだけど…それに旅館に入る歳も一悶着あった…
「結構力持ちだったなぁ…」
一般的に旅館ってなると玄関はまず、上がり框付きの段差がある…そこに来た時、彼女は車椅子のタイヤをさっと雑巾で拭き、私の後ろに付くと車椅子のレバーに手を掛け、力を込めたのが分かった…彼女の意図に気付き、見た感じ段差はそれ程高くなかったけど、彼女の体格を思い浮かべ、さすがに止めようと思った私に彼女は…
「ちょっとだけ我慢ちててくだちゃいね…よい、ちょっと。」
緩い掛け声と共に彼女は改造前の重い車椅子(普通改造した方が重いだろうけどね…)加えて、私の体重による重みを物ともせず持ち上げたのだ…それも、私にほとんど揺れを感じさせなかったから…多分相当に余裕があったのだと思う…絶句する私を他所に彼女はゆっくり私を床に下ろした。
「ふぅ…では、お部屋に案内ちまちゅね。」
ちなみに後で従業員の雀さんに聞いたら、持ち上げて下ろすだけなら自分たちも出来ると思うとの事…ここの人(?)たちって本当にどうなってるの…?
……もう深く考えない様にしようと思い、私の世話をしようと残ろうとする雀さんを説得して帰し、座椅子に座る……暇だなぁ…外は正直何も無かったし、あまり彼女や雀さんの手を煩わせたくないので喉まで出かかったその言葉を飲み込む
備え付けの茶葉を使ってお茶を淹れて飲む…あっ、結構美味しい…梅昆布茶って初めて飲んだけどこんな味なんだ…
部屋でボーッとしていたら紅ちゃん(口に出して呼ぶ時はさん付けだけど内心ではこう呼んでる)が襖を開けて、勧められるまま温泉に…いや…断ろうとしたんだけどさ…何か断り切れなくて…脱衣場まで行って、浴衣を脱がされ…私は紅ちゃんに抱き抱えられながら温泉へ…