「……」
私は全部話した……話してしまった…カルデアに来るまでの自分の身の上から、カルデアに来てからの戦いの日々も…全て。所々暈して伝えるつもりだったのに…紅ちゃんが思いの外聞き上手だったから…
「……」
先程から紅ちゃんは黙ったまま私の身体を手拭いで擦ってくれている……というか気付いたら前も…何かもう恥ずかしいも何も無くなって来たカンジ…というか、正直恥ずかしい以上に、どれだけ大人びていても幼い子どもとしか思えない紅ちゃんに傷だらけのこの身体を見せるのが本当に心苦しくて…
「あの…ごめんね…こんな話して…忘れ「お客ちゃま」え…?」
「アチキはお客ちゃまのちゅらさをこうやって聞くことは出来ても…理解ちゅる事は出来まちぇん。」
……その舌っ足らずの言葉には子ども、という事を忘れさせる苦悩が滲み出ていた。私の事を本気で案じる響きがそこにはあった。
「紅ちゃん。確かに私は、辛くなかったと言えば嘘にはなるよ。」
「止めたいと思った事は無かったのでちか?」
「…私しかいなかったのもあるけど…正直、投げ出そうと思った事は一度も無いよ。」
「何故でちか?」
「私は…私の大事な人たちを助けたかった…ただ…それだけ。その為に戦いに行くなら躊躇うつもりは無かったよ。」
「……ちょの為にお客ちゃまが傷付くとしてもでちか?」
「偉そうに言ってなんだけど…前線に出てるのは私じゃなくてサーヴァントの人たちだからね…戦うだけならまだしも、私を守る役目も…果たしてくれたから。私は今日までこうして生きて来れた。」
「……」
「だからね、そんな顔しないで。私は…大丈夫だから。」
私は……何時も私なんかを先輩と呼んで慕ってくれる大事な後輩のマシュを泣かせてばかりで…そんな彼女と目の前の小さな女将を私は不思議と重ね合わせてた。
「……終わりまちたよ。」
「あっ、終わった?ありがとう、紅ちゃん。」
そう言われてまた、少しだけど恥ずかしさが戻って来る…
「身体が冷えてちまいまちたね、湯船に戻りまちょう。」
「うん、お願い。」
私は両手を伸ばし、今度は抗う事無く彼女に身を任せた。
「お客ちゃま?」
「ん?何?」
また湯船に浸かって寛いでいた私に後ろから声をかけられる。
「お客ちゃまのお悩みはちゃっき聞かちぇて貰いました。」
「うん…」
「何の助言も出来ずちゅみまちぇん。」
「……」
彼女がその場で頭を下げる……ここまでの間に彼女の性格は分かって来たので多少驚きはしたが、私は慌てる事は無かった。
「ううん…そんな事無いよ。私は聞いてくれるだけで嬉しかったから。」
カルデアのスタッフの人たちも、マシュだって、サーヴァントの人たちだって…私が弱音を吐いたって聞いてくれたと思う…でも私は言えなかった…それは…皆、私より大変そうではあったから気後れしたのもあるけど…それ以上に私は弱い自分を見せるのが怖かった…紅ちゃんに話したのは、私の事を知らない人だったから…付き合いが長くなったからこそ言えなかった…
「だからさ、頭を上げてよ。私は本当に嬉しかったから。」
「…ちょれだけでは無いのでちが…分かりまちた…」
そう言うとやっと紅ちゃんは頭を上げてくれた…うん…さすがに見た目子どもの彼女に土下座の体勢取らせたままなのは私の精神もゴリゴリ削れて行くからね…分かってくれて良かった…
「…もう上がりまちゅか?」
「うん…そうする。」
私はまた彼女に抱き抱えられて湯船から上がった。