湯船から上がった私は紅ちゃんに抱き抱えられ、脱衣場にて、浴衣を着せられて、車椅子に乗せられた。
「……」
その間、紅ちゃんは口を開く事は無かったし、私からも話しかける事は無かった。さっきの話のせいもあるけど、この沈黙自体は不思議と嫌なものじゃなかった…それは多分、この子…紅ちゃんの雰囲気がそうさせたのかもしれない…見た目がこんなに幼いのに明らかに、私とは別のベクトルで過酷な道を歩んで来たが故の貫禄という奴…でもそれ以上に彼女の纏う雰囲気は暖かく、優しかった。
……私は色々な人に助けられて来たけど、今まで助けてくれた人の中で、多分…一番幼く、でも年端のいかないこの子が誰よりも優しい…自然と私はサーヴァントの子どもたちとは比べようとは思わなかった…何となく、私はこの子はサーヴァントでは無いんじゃないかと思った。理由は分からないけど…
「……」
私の事を話したせいか、私はこの子の事を知りたい欲求が湧いてくる…でも、彼女はこの場では話してくれないんじゃないかと思う…だから私は口を噤んだ。
……結局部屋に着くまで私も、彼女も口を開く事は無かった。
「着きまちた。」
「ありがとう、紅ちゃん。」
紅ちゃんが部屋の襖を開け、私を部屋に入れる。
「よい、ちょっと。」
何度か聞いたそんな掛け声と共に私は座椅子に下ろされる。
「ふぅ。ありがとう。後は必要になったら言うから戻って大丈夫だよ?」
お風呂に入ったせいか、自分でも気付かない程、溜まっていた疲労が消えたのを感じ、つい声が漏れつつ、最低限の声をかける…ここはカルデアの部屋じゃないし、トイレは部屋には無いから、そう言う時は彼女か、あの雀さんのうちの誰かに声をかけないといけないけど…今はそれ以外の用事は…後はせいぜいご飯を待つくらいかな…お風呂から上がる時既に日は暮れ初めていた…つまりこの後は夕食が来る筈……ちょっと楽しみ。
「お客ちゃま。」
でも紅ちゃんは一向に部屋から出て行く様子は無い。鬱陶しい訳じゃないけどあまり私の為に彼女の時間を割いてもらうのは心苦しい…明らかにこの子、仕事の範囲を逸脱してると思うしね…私しか宿泊客がいないからって私の事ばかりに構ってる訳にも行かない筈…
「どうしたの?忙しいでしょ?戻って大丈夫だよ?何かあったら声をかけるから…」
部屋の周りは明らかにおかしいと感じる程雀さんたちが彷徨いてた…業務の範囲にしてもおかしい…旅館に泊まった事が無くてもそのくらいは分かる…あの子たちは私のお世話をしようとここにいるのだ…
「……お客ちゃま、アチキに何かお聞きになりたい事は無いでちか?」
……彼女からのその言葉に冷水を浴びせられた様な気分になって行く…さっきお風呂に入ったのに身体に走る悪寒が止まらない。
「……」
言えない…これを口に出したら今の心地好い関係性を壊す事になる…
「お客ちゃま。」
……そんな焦りを感じている私に見せる彼女の微笑みに揺らいだ…聞いて…良いの…?……でも私も本当は分かってる…この疑問を口に出さないと多分…私は…!
「大丈夫でち。アチキはお客ちゃまの敵じゃありまちぇんから。」
その言葉に私の心は決まった…聞こう、じゃないとずっとこのまま…
「紅ちゃん…私は…どうしてここにいるの…?」
私はここに来てからずっと疑問に思っていた事を口に出した。