「…ん…っ…」
微睡みの中から目を覚ますこの瞬間は私は嫌いでは無い…ブラゴからしたら呆れる以外の何ものでも無いのだろうけど…ブラゴ?
「ブラゴ!…ここは…?」
目を覚ました時、私の目に入ったのは白い天井、それから一枚の風景画の掛かった壁…ここは何処なの…?
私は何故こんなところに…!
「そうだ!ブラゴ!」
意識を失う直前の事を思い出す…そうだ…私はブラゴに助けられて…
「ブラゴ!何処にいるの!?」
部屋の中にブラゴの姿は無い。一緒に城から脱出したんじゃないの…?その時、部屋のドアを叩く音が聞こえた…
「誰?ブラゴ…?」
「目を覚ましていたか…入って構わないか?」
「…ええ、どうぞ。」
その声に聞き覚えは無かった…男性の声だと言うのは分かる…一瞬警戒したけど、少なくとも私を助けてくれた人物だろうとは思う…違ってても逃げ場は無さそうだけど…そんな事を考えていたらドアが開いた…
「っ…」
私は一瞬その顔を見て言葉を失った…綺麗な顔…さっきの声の主だとすれば間違い無く男性である筈なのにその顔は女性と見間違う程に美しかった…
「…話は出来るか?」
「!…ええ…大丈夫よ…」
気が付くと訝しげな顔をした彼がそう声をかけて来ていた…いけない、助けて貰った以上、礼ぐらいは言っておかないと…
「貴方が助けてくれたのかしら?ありがとう。」
「……別に君を助けたわけじゃない…どちらかと言えば成り行きだ…ここも別に俺の家と言うわけじゃない。」
「そうなの…」
「さて、話を聞かせてもらおう…先ず、君はベルモンドの者か?」
「!…ええ、そうよ。私はシェリー・ベルモンド…貴方は?」
「俺の名を聞いてどうするんだ?」
「一応はここまで運んでくれたのでしょう?なら、貴方は恩人よ…名前くらい知りたいと思わない?」
「……アルカード、だ。」
……嘘…そんな…まさか…
「その反応を見るに、俺の事は知っている様だな…」
「ええ…ベルモンド家の本家にあった文献で読んだわ…嘗て…ドラキュラの息子でありながら、ベルモンドの人間に協力し、葬った…人の味方をする吸血鬼…」
「人間の味方をしたつもりは無い。ドラキュラを倒す…それが俺の宿命だ。」
「でも…結果的に貴方は人間を守っている…」
「この話に意味は無い…話を戻そう…ベルモンドの一族として君はドラキュラを狩る為にこの地に来た…で、何があった?何故城の外で傷だらけで倒れていた?…応急処置は済ませてあるが、早く医者に見せなければ危険な傷だ…」
城の外に倒れていた…?
「…私を見つけた時、他に誰かいなかったかしら?」
「いや、君だけだ。君は城の外に倒れていた…そこに置いてある本と共にな。」
「本?…あ…」
彼が指を指した場所には机があり、その上には…!
「っ!」
「動くな…傷が開く。」
「あの本は…!」
「俺が取って来る…君はそこを動くな。」
机に向かって歩く彼を見ながら考えてしまう…ブラゴ…貴方は…何処にいるの…?