「断る。」
「そこを何とか…!」
私は喫煙所から出て来た巌窟王さんを何とか捕まえる事に成功した。
「誘われたのはお前だろう?何で俺が一緒に入らないとならん。」
「いや…だって…あっ!なっ、なら介助役って事で「奴はお前の身体の状態を見た上で誘ってきたんだろう?ならお前が自力で風呂に入れないのは分かっている筈、向こうに委ねれば良かろう。」う…そうですけど…」
「大体何故俺を誘う?お前、自分と奴の性別すら分からない程馬鹿では無いだろう?」
「いやぁ…どうせ巌窟王さんも武蔵さんに誘われてたみたいだしちょうど良いのでは?」
「だから性別「少なくとも私は気にしません」歳食ったババアなら未だしもお前は気にしろ!」
大声で怒鳴りつけられて耳鳴りがする…あー…紅ちゃんの気持ちが分かった気がする…
「急に大声出さないで下さいよ!?耳可笑しくなるじゃないですか!?」
「知るか!少しは慎みを覚えろ!」
「慎みって言ったって…私にそんな感情あってどうするんですか…何処に行くのも介助してくれる人が必要な身ですよ?」
昔なら未だしも、今の私は用足し一つ自力ではこなせないのだ…何が言いたいかと言えば平たく言えば筋力の落ちた私の腕では自分の身体を支えられないから用を足そうとしてトイレまで行っても、車椅子から便器に移れない…まぁこの着物を自分で脱ぐ事は出来るけどさ…
「だから!何で俺がその状況で一緒に入らなければならん!?あの女に補助を頼めば良かろう!?」
「いや…何か貞操の危機を感じて「俺がいるよりマシだろうが、仮にあの女が両性愛者でも余程の鬼畜でもなければお前の様な身の上で襲う事も無かろう」…そう、ですね…」
「話は終わり…何故そんな顔をする?」
「……不安なんです…縋ったら駄目ですか…?」
別に本当は分かってる…私の身体に魅力は無い…仮に武蔵さんが今巌窟王さんが言った通りの人でも私が襲われる事は無い事くらいは…
「…あの女、性根は腐ってないと見た。何も俺になど頼る事は無いだろう。」
「そもそも聞きたかったんです…何で私を助けてくれたんですか…?」
この世界に一足早く着いただろうこの人は何を思ったか私の為にここで働こうとした…ただあの時、少し言葉を交わした私の為に。
「私、気付いてるんですよ?貴方はあの時、本当は私の敵の立場だったって。」
サーヴァントは誰一人おらず、私だけが単独でレイシフト…そこにいた野良のサーヴァントが一人…これで怪しいと思わないなら私だってとっくに死んでいた。
「……フン…貴様はあの時点で弱り切っていた…あのままなら貴様はあそこを出る事も叶わなかっただろう。」
「だから…聞きたいんです…貴方は私の敵だったんでしょう?」
「貴様がこの場でマスターを名乗るなら、今でも俺は貴様の敵にはなるだろうな。」
「今の私にマスター権はありません。」
「…では、俺はお前の敵でも味方でも無い。」
「味方じゃないんですか…?」
「お前を助けたのは…単なる気紛れだ…そもそも、もうお前は自分で歩く事を決めたのだろう?」
そう、そうしようと思ったから私はここで働こうと決めた。だけど…
「そうです…でも…不安に駆られたらいけませんか?」
「あの女将にでも頼れ「紅ちゃん忙しいですし」俺もここで働いているが?」
「もう…!良いじゃないですか!?美女の裸が見れるんですよ「何を言ってるんだお前は!?」だってめちゃくちゃ美人なんですよ、武蔵さん!巌窟王さんって女好きでしょ?」
「……お前…俺の事をどんな本で読んだんだ…?」
「えっと…確か…あー…すみません…作者の名前忘れました…」
「貴様……まあいい…とにかく俺は別に女好きな訳では「えっ!?同性愛者なんですか!?」何故そうなる!?」
「あー…だから「何を勝手に納得しているんだ!?俺が投獄される前に婚約者がいたのは知っているだろう!?」いやまぁそうですけど…だっ、大丈夫ですよ…!私別に偏見無いし…アイタァ!?何するんですか!?」
巌窟王さんは私の頭に拳骨を落とすと廊下の向こうに行ってしまった…からかい過ぎて怒らせちゃったかな…あ〜あ…これで結局、一人で行かないといけなくなったよ…