「いやぁ…ごめんね?」
「本当に驚いたよ…」
それから二時間程かかって呼吸も漸く安定して来て、身体も起こせる様になったのでずっと傍についてた武蔵さんに改めて彼を呼んでもらう事にした…何せ、肝心な事はまだ何も説明出来て無いからね…
「とまぁ、さっき見てもらった通り…私は普通の礼装も含めて魔術を使うと身体にダメージが行くの…で、多分これが原因だと思うんだけど呪いの進行が早くなったみたいでさぁ…完全に身体が動かなくなっちゃった訳。それで、今はここ閻魔亭で働いてるの。」
「ん?身体が動かなくなったんなら「ん~とね…私も詳しくは聞いてないんだけど、今ここにいる私は簡単に言ったら霊体なの、身体とはまだ繋がってるらしいけど」いやいやちょっと待って…どういう事?」
「すっごい簡単に言ったら今の私は多分、サーヴァントに近い状態なんだと思う…きっと…私はもうカルデアには帰れない。」
「そんな…」
私の事を気にしてくれるのか、彼が顔を俯かせる…う~ん…私の事気にしてる場合じゃないと思うんだけど…
「ほらほら私は今更気にしてないから顔上げて…で、私の事はもう良いよね?多分君もほとんど同じ事をしてたんだろうからさ…」
「あー…うん…でも、君ほどキツくは無かったと思うけど「そういうの気にしなくて良いから、今はとにかく君の事だよ」え?俺?」
私の話が与えた衝撃が大きかった為に自分の事まで考えてないって、ところかな?……それにしたって鈍い気はするけど。
「私の事は今は置いといて、君の今、目の前の現実をちゃんと認識して。」
「何を言って「元とはいえ、私はカルデアのマスター藤丸立香…じゃあ君は誰?」俺は……あ!?」
やっと気付いてくれたね…何か無駄に時間をかけた気が……あ…私のせいか。
「性別こそ違えど君もカルデアのマスター藤丸立香…でもそんな事は有り得ないよね?私がここにいるんだし「ドクター!?ダヴィンチちゃん!?」……」
焦ってカルデアと通信を試みる彼を見てつい、溜息を吐いてしまう…まさかこれだけ時間経過して、一度も通信試してなかったの…?私の事が心配だったって言ったら聞こえは良いけど、見知らぬ場所でサーヴァントも連れず一人でいるんだからもう少し警戒しないと…
「君はね、多分並行世界に飛ばされちゃったんだよ…特異点と違ってはっきりした座標が分からないなら向こうもきっと君が何処にいるのか分からないと思う…まあ、ここ自体割と特殊な場所みたいだけど。」
「……」
「取り敢えずちょっと落ち着いてね?……さてと。それじゃあ今までの話を踏まえた上で、私は君に確認しなきゃいけない事があるの。」
「…何?」
「君、お金は持ってる?」
「え「忘れちゃった?ここは旅館だよ?」……」
この反応…あんまりお金は持ってないか、無一文の可能性が高いね…まあ、特異点の修復にあまりお金は使わなかったりするし、どうせほとんどの場合使えないからカルデアでマスターやってても正式に給金出る訳じゃないし。
「数日程度なら私も紅ちゃんに頭下げてあげるけど…カルデアの方で君の居場所が把握出来ていない以上、このままだと長期滞在せざるを得ないよね?」
「……」
私もつい最近まで同じ立場だった彼をこんな風に糾弾したくは無いけど…私も今はここの従業員だからね…
「まあ、そんなに落ち込まないで。紅ちゃんに事情話しにいこう?多分悪い様にはしないと思うからさ。」