「この本が君と共に落ちていた…」
そう言って彼が私の手に本を渡してくれる…色は黒く、表紙に独特の模様が描かれたその本はやっぱり…!
「悪いが君の寝ている間…先に中を改めさせてもらった…魔導書の様に見えたが、俺はその文字に見覚えが無い…恐らくこの世界の何処にもその文字を使っていた場所は無いだろう…教えてくれ、その本は一体何なんだ?」
「この本は…私が戦って来た…その証なの…」
そうして私は語り始める…嘗てブラゴと出会い、戦い続けたその日々を…
「千年に一度行われる魔界の王を決める戦い…そんな事がこの世界であったとはな…」
私が口を閉じた所で彼は壁にもたれかかりながらそう口にする。
「貴方は…信じるの?この話…」
「俺が何者だと思っている?吸血鬼だぞ?この世界にどれほど不思議な事があろうと今更そんなに驚かない。」
「そう…」
「この本については分かった…それでだ、既に君はその戦いで敗退し、戦いそのものも当に終わっていると言ったな?では、何故今この本がこの場にある?君のパートナー…ブラゴが魔界に帰還すると同時に本も消えてしまったのだろう?」
「それは…私にも分からない。でも、この人間界に彼が再び現れて私を助けてくれた…それが私の知る全てよ。」
「そうか。さて、君の事情も分かった…これから君を街まで送って行こう。」
「待って…どういう事かしら?」
「ここは既に村人の大半が避難した、医者もいない…君の傷は早く医者に見せなければならない…」
「何言ってるの?そんな暇は…」
「ドラキュラはまだ復活したばかりだ…すぐには動かない、君は安心して傷を癒すと良い…」
「本当にちょっと待ってくれない?…私の足はすぐには治らないわ…」
私は毛布を退けて、その中にあった…ベッドの上に乗る、包帯の巻かれた足を見る…
「そうだな、君は間違い無く街の病院に入院する事になるだろう…」
「その間、ドラキュラは本当に動かないの?」
「それについては…もう君が気にする事では無い。」
「だから…どういう事!?」
「後は俺がやる。もう君の出る幕は無い、と言う事だ。」
「勝手に決めないで!私はここにドラキュラを倒しに来たのよ…!このまま病院のベッドで過ごすなんて「はっきり言わないと分からないか?」っ!?」
彼が音も無く私のいるベッドに来ると私の前に顔を近付ける…!
「足手まといだからもう何もするな、と言っている…分かったら頷け、お前が今するのはそれだけで良い。」
彼が私を睨みつける…デスと同等、もしかしたら上かも知れない威圧感を至近距離でぶつけられたからか、身体は勝手に強張り始め、呼吸もままならない…!
「早く頷け…どうした?それくらいは出来るだろう?」
「…いや…よ…ブラゴは…私を…助けて…くれた…私には…分かる…の…彼は…あの城で…私を…待って…いる…」
何とかそれだけを口から絞り出す…ブラゴにもう一度会って…そして…ドラキュラを倒すまで…私は止まれない…!
「ならばもっと酷な事を教えてやろう…お前は誰に傷を負わされた?さすがに入り口近くの下級の眷族にやられた訳では無いだろう?」
「…デス…よ… 」
「そうか…ならお前が見逃されたのも頷ける…他の奴はほぼ話は通じないし、ドラキュラならお前は見逃される事は有り得ない。」
「何が…言いたいの…!?」
「デスはお前をただ見逃す訳は無い…凡百のハンターならまだしも、お前はベルモンドだ。なら、見逃された理由があるとは思わないか?」
「どういう…事…?」
「お前を助ける為現れた元パートナーの魔物…ブラゴ。見逃されたのは彼が理由だ…彼は単独では魔法を使えない上、退魔の力は無い…なら、お前の為、身代わりになって死んだか、そうでなければ…ドラキュラの下に着いたとしか考えられないだろう?」
「っ!?」
彼にそう言われ、身体から力が抜けて行く…ブラゴは私の為に…!?
「改めてもう一度言う…君はもう何もするな…」
彼がそう言って離れ、背を向けて部屋を出て行った…