「え?二人と知り合った経緯…?」
「うん。」
業務が終わり、約束通り武蔵さんが私の部屋に連れて来た彼が開口一番に発したのがそんな言葉だった…う~ん…
「武蔵さん、もう部屋に戻ってくれて良いですよ。」
「え!?何で!?ダメだよ、こんな時間に男の子と二人きりなんて!」
だからアンタは私の母親か!……ハア…まっ、新鮮ではあるけどね…私のお母さん、基本的に私のやる事にあんまり文句言わないし…とはいえ、それはそれだ…
「……どうしても聞きたいなら巌窟王さんに許可を取って来てください「何で彼は良くて私はダメなの!?」…彼は巌窟王さんを知ってました、多分、私に似た状況で縁を結んだんだと思います…そういう理由じゃ駄目ですか?」
「む…じゃあ私は!?」
「武蔵さん、元はこの旅館の残留思念でしょう?そこまで深い付き合いじゃないですし「うわ~ん!」あっ…ちょっと…」
武蔵さんは泣きながら部屋を出て行った……嘘泣きじゃないんだろうけどきっちり襖閉めて行ってる辺り律儀だね…
「…それじゃあ二人とどうして出会ったか、だったね「あれ放っておいて良いの…?」君も知ってるんじゃない?武蔵さん一度臍曲げたらしばらくは元に戻らないから「確かに…」じゃ、まず巌窟王さんの事からだね…」
「出会いはあの監獄塔…君もそこであの人に出会ったんじゃない?」
「うん…俺、あの時は一人で何故かレイシフトしちゃっててさ、最初にあったエドモンと契約してしばらく一緒に行動してたんだ…だけど最後は裏切られて…あの時は本当にヤバかったよ…」
やっぱりあの人敵だったんだ…
「そう…私はね、出会っただけで終わり。」
「え?」
「出会った時点で…もうまともに動ける体力も無かった…でも、倒れた私を多分彼は助けてくれたんだと思う…そして今はここにいる…」
「動ける体力が無かったって「私は呪いに蝕まれてたって言わなかった?」あ…」
「多分、あそこに私が来た時点でカルデアの私の身体はもう意識は無かったんだと思う……まあ何で今、私はこんなに元気なのかは知らないけどね…あの時も恐らく、もう既に霊体だったんだろうし。」
「……」
「その後、再び意識を取り戻した私はこの旅館の外で目覚めた…直前の記憶が曖昧になってて多少混乱はしたけど何とかここに辿り着いた…そして先に来ていた巌窟王さんが私の為にここで働いてるのを知った…」
「そうだったんだ…」
「見ての通り、今の私はこうして足が動かないだけで比較的体力は戻ってるからね…まあ自分の身体を持ち上げる程には腕の力は戻ってないからアレだけど…まあそんな訳で私でも何か出来る事が無いかと思って紅ちゃんにお願いしたの…それで今はここの受付を担当してる。」
「武蔵ちゃんは?」
「…ああ、あの人なら…元はここの残留思念だったんだ。」
「さっきも言ってたけど…残留思念?」
「そう、ここに来るお客さんは多くが英霊や、神霊なのはもう知ってるでしょう?武蔵さんも嘗てお客さんとしてここに来て、数少ない出禁になった人だよ。」
「……何をやったの?」
「さぁ?私も紅ちゃんに聞いてみたけどかなり疲れた顔してたから、詳しくは聞けなかったんだよね…」
「そっか…」
「それで、本人は出て行ったんだけど…念いが強過ぎたらしくて思念体が残っちゃったんだって。」
「念いって?」
「……美男美女とお風呂入るまで帰りたく無かったんだってさ。」
「あー…成程。何か言いそうな気がするよ…」
「君のカルデアにいる武蔵さんもそんな感じ?それなら苦労しただろうね…」
「うん…あれ?でもあの武蔵ちゃんは思念体じゃなくてサーヴァントだよね?」
「気付いた?うん、それなんだけど、元はと言えば私、武蔵さんに声をかけられたの。一緒に温泉入らない、って。」
「……成程ね。」
一体何に納得したんだろうね彼は……まあ良いか。
「こんな身の上だし、断ろうと思ったんだけど…本人はそれでも良いって言うし。それで、私は紅ちゃんに色々お世話になってるし、それで紅ちゃんに迷惑をかけてるこの人が帰ってくれるならと思って、一緒に入る事にしたって言うのが半分…もう半分は剣豪"宮本武蔵"って存在に個人的に興味があったから。……まあ今の所、結局生前の話全然聞けてないんだけど…」
「そう…」
「それで、温泉入る前に脱衣場で私の身体見て、大泣きされてね…その後私の今までを話したら、私の補助をする為、思念体の自分を依り代にサーヴァントになって勝手にまた旅館に来てた武蔵さんが私に仕えるって言い始めて「ちょっと待って。」何?」
「今聞き捨てならない事があったんだけど…思念体の自分を依り代にサーヴァントになったって何!?」
「……そう言われてもね…深く気にしてもしょうがない人なのは分かってるんじゃない?」
「……それは…確かに…」
「とにかく、それであの人は今はここで働いてる…筈?」
「筈って「私の所に入り浸ってる時間の方が長いからね…お客さん来たらいなくなるし、それ以外はお世話になってる事の方が多いからあまりキツく言うつもりは無いけど…間違い無く仕事はサボってるね…」…あー…」
納得顔になった彼を見て溜め息を吐く…
「ところで君はそんな話をしに来たの?」
「…いや…それは…ずっと気になってたから…」
「そう…」
「ごめん…帰る「ねぇ!」え?」
「私は…別に気にしてないよ、寧ろ、私の方が勝手な事言っちゃったかなって、気にしてたんだから。」
「……何が?」
「私と君は同じじゃない…並行世界の自分であっても私と君は同じじゃない。」
「……」
「私と君は…どちらも藤丸立香。でも同じなのは名前だけ…きっと何もかも全部違う。」
「…うん、そうだね…」
「良かったらまた部屋に来てよ、君のカルデアの事を聞きたいから…私も自分のカルデアの事を君に話したい。」
「うん、また来るよ。」