彼と無事仲直り出来た次の日、閻魔亭に意外なお客さんがやって来た。
「いらっしゃいま「マスター?」え?」
「私だよ……覚えていないのか?」
さっきまで読んでいた本に半分意識を割かれていたせいでちゃんと顔を見てなかった事に気付き、改めて目の前のお客さんの顔を見る……え…?
「嘘…エミヤさん…?」
「久しぶりだな、マスター。元気そうで何よりだ。」
そこには私が特異点Fから帰って来て以来、最初にお世話になった赤い弓兵…エミヤさんが立っていた。
「でもどうして…エミヤさんって確か…守護者で基本的に座からは勝手に動けないんですよね?」
私は彼から聞いた事を思い出しながらそう尋ねた。
「…確かに本来ならそうなんだが、今は抑止力も正常には働いてないからな、せっかくだから私も少し休暇を、と思ってね…前々から聞いていたここに来てみようかと思ったんだ……すまないな…」
「え?何がですか?」
「私は君が目を覚まさなくなってから、契約を解除してしまったんだ…」
そう言って彼は深々と頭を下げた…そんなの、気にしなくて良いのに。
「…良いんですよ、エミヤさん…私が目を覚まさなくなった以上、人理修復をしてもらうという契約は切れたも同然ですから…それに、私、嬉しいんですよ。」
「む…何がだ?」
「今までエミヤさんはずっと働き続けだったんでしょう?……自分のルーツが分からなくなるまで。」
「そうだな…」
「カルデアに来てからも、皆の為に料理をしてくれたり、私の事も気遣ってくれて…でも、自分は全然休もうとしない…サーヴァントだからって理由で…」
「……」
「そんなエミヤさんが自分から休暇を取った……偉そうに言うつもりは無いですけどそれが本当に嬉しいんです…」
「……何時もろくに休みを取ろうとしないのは君の方だっただろう?私としては自分の事を気にして欲しかったんだがな…」
「良いんですよ、だって私はマスターなんですから……エミヤさんが…皆が頑張ってるのに私だけ休んでるなんて出来ません……まあ、こんな身体の私にはそう、大した事は出来ませんでしたけど…」
「……そんな事は無い…マスター、君は本当に良くやっていた…」
「ありがとうございます…まあ、エミヤさんの事を理由にしちゃいましたけど…私が本当に嬉しいのは…」
「ん?」
「こうしてまた貴方に会えた…それが一番嬉しいです。」
「……全く…君は本当に厄介なマスターだ…」
「エミヤさん…だった、ですよ……今はもう…私はマスターじゃありません。」
「そうだな…では…君の事は何と呼ぼうか?」
「……どうしましょう?」
「む…どういう事だ?」
「いやぁ…ちょっと厄介な事になってまして…実は今、ここには並行世界の私が働いてるんです…"彼"も藤丸立香なんですよ…だから…」
私は本当はエミヤさんに"立香"……ってそう呼んで欲しい…でもそれは出来無いから…
「…承知した。では君の事はやはりこう呼ぼう…マスター、と。……まあ、今の私は単なる客で、君はここの従業員の様だから個人的に呼ぶ事は無いかもしれないが。」
「そうでした…じゃ、改めて…閻魔亭にようこそ!エミヤさん、ゆっくりして行ってくださいね?」
「うむ、世話になる…」