結局私は紅ちゃんの方針も考えると言い出す事が出来無かった…
「大丈夫だって。生前のエミヤは戦場を回ってたらしいし…幸い、相手も人間じゃないし、あのくらいなら楽勝じゃないかな?」
「そうかな…」
私は"彼"の部屋に来て愚痴っていた…
「そんなに心配?」
「そりゃあ、ね…」
「…逆に何で?エミヤはそもそもサーヴァントだよ?」
「……」
そんな事は改めて言われなくても分かってる…私が心配する必要なんて無い事くらいは…
「……俺の勝手な思い込み、って言うなら否定してくれて良いし、俺は謝るけど…聞いて良いかな?」
「何…?」
「もしかして君は…エミヤが好きなの?」
……?
「好き…って…?」
「あー…そっからなのか。君、確か最初に召喚したのってエミヤだったっけ?」
「うん、そうだよ…特異点F…冬木市では召喚に失敗したんだよね…」
そう…私は召喚出来無かった…本当に良く生き残れたよね…
「…で、君はカルデアに戻って来た後、最初の召喚でエミヤを召喚した…それからエミヤはずっと君を支えてくれたんだよね?」
「うん、そうだよ。」
エミヤさんがいたから私は立ち直れた…オルガマリー所長を助けられなかった罪悪感…マスター候補が私だけになってしまった事による重圧…皆、私の事を強いって言ってくれたけど違う。私は強がっていただけ…何時だって怖かったし、心細くて泣きそうにもなった…それでもマスターとして強くあろうとして必死で隠していたそれは……エミヤさんには直ぐにバレてしまった…
それからだ…マシュが異常なくらい私に構うようになったのは…多分、あの後エミヤさんから何か聞いたんだろうけど。
「マシュだって私を助けてくれたけど…最初に私の弱さに気付いてくれたのはエミヤさん…あの人がいたから私は頑張って来れた。」
「君にとってのエミヤってどんな存在?」
「……お兄さんかな?私、一人っ子だけど兄がいたら…こんな感じなのかなって…」
エミヤさん鋭いから私が彼に何を見ていたのかは気付いていたと思う…そのせいか彼は苦笑いばかりしてたけど…
「兄か…本当に?」
「何が?」
「いや…君のそれってさ、歳の離れた兄に抱く親愛の感情って言うより、異性に抱く恋愛感情って感じなんだけど…」
「え?……えええええ!?」
わっ、私がエミヤさんを好き!?……そっ、そんな訳…!
「……否定出来る?」
「……出来無い…」
改めて考えたら彼の言葉を全く否定出来無かった…そっか…私エミヤさんが好きなんだ…そう考えた時、私に向けられていた粘ついた憎悪の視線が、生暖かい物に変わったのが分かった…そうだ、これについて彼に聞いてみよう…
「話は少し変わるんだけど…」
「何?」
「君と話してる時、何時も何か私に嫉妬と憎悪の篭った視線が向けられるのを感じてたんだけど…何か心当たり無い?」
「……あー…それなら多分きよひーだね…」
「きよひー?」
「安珍・清姫伝説って言ったら伝わる?」
「あー…」
知ってる…すっごく簡単に言ったら安珍という僧侶を好きになった少女が自分の好意を拒絶された事にキレて、その想いだけで大蛇に変身し、お寺の鍾の中に隠れた僧侶安珍を口から吐いた炎で焼き殺す話…要するに太古のヤンデレ。
「知ってるけど…何で君は彼女から好意を向けられてるの?」
「彼女にとって俺は…安珍の生まれ変わりらしくて…」
……そんな事…本当にあるだろうか…伝説の内容から察するにサーヴァント召喚されたらバーサーカーとして召喚されるだろうから勘違…おっと。生暖かい視線が冷たくなった…殺気を感じる…こんな事で死にたく無いし、これ以上は止めとこ。
「それで?何でそれを聞いたの?」
「いや…エミヤさんが好きなの自覚したら視線が生暖かくなったんだよね…」
「…きよひーのお墨付きって事だね…君は間違い無くエミヤが好きなんだよ、異性として。」
「そっか…」
自覚したからってどうするつもりも無い……って言いたい所だけど…どうしよう?…自覚しちゃったら恥ずかしくてこの後どんな顔して会ったら良いのか分からないよ…