「起きてる?」
「うん…いや、そもそも元気だしね…」
暇を持て余していた私の耳に襖越しに本日四度目の彼の声が響いた。
「どうしたの?もしかして本の追加?」
彼は今朝、私に朝食を持って来た後、少しして閻魔亭に置かれてる本を持って来てくれた…暇だったのではっきり言って非常に有難くはあった…それはそうと、何の用だろう?昼食をさっき彼が持って来てくれたばかりだからまさかもう夕食を持って来たって訳じゃないよね…新しく本を持ってきてくれたなら有難いけど…
「え?もう読み終わったの?…そっか。まあ、確かに追加は持って来てるけど…取り敢えず君にお客さん…中に入っても良いかな?」
「うん…入って来て。」
その声と共に襖が開けられ、部屋の中に彼と…
「エミヤさん…」
「…元気そうだな、マスター。」
「はい…」
「じゃ、これ本ね?それじゃあ俺は行くから…ごゆっくり。」
そう言って私が読み終わった本を持って彼が部屋を出て行った。
「……彼と何か話したんですか?」
昨日の私の告白の話をすぐに口に出す気になれず、かと言って大して話したい事も出て来なかったので、私はそんな事を聞いてみた。
「ああ。少しな…」
エミヤさんの歯切れの悪さにもどかしさを感じる…いや…全部話して貰えるって考える方が図々しいかな…
「…まあ、言っても構わんか。彼に謝罪されてね…」
「謝罪?」
「昨日の騒動の原因が自分にあると、な…」
「あー…」
そんな事は無い。私は彼に背中を押してもらっただけ…その後に起きた事は彼とは無関係だ、武蔵さんと戦おうとしたのは結局私の意思…冷静に考えてみたら私は色々早まった気がして来る…明日、武蔵さんと紅ちゃんにちゃんと謝らないと…というかまさか武蔵さん追い出されるとかじゃないよね…?普段から仕事サボってたけど今回の件が原因になるとさすがに…
「どうしたんだ?マスター…?」
「…!…いえ、何でも無いです…」
……取り敢えずそっちは後で考えよう…今はエミヤさんと話さないと…
「あの…昨夜の事ですけど…」
「…少なくとも私が口にした事に嘘は無いし、撤回はしない…それとも君の方が無かった事にしたいのかね?」
「……いいえ。あれは紛れも無い私の本心ですよ。」
「そうか…それで?君はどうしたいんだ?」
「どう、とは?」
「告白してそれから…と、いう事さ。」
「……」
そう言われても正直昨日は気持ちが暴走していて、勢いで言ったのでその先、なんて考えてもいない…もちろん気持ちに偽りは無いってはっきり言えるけど…
「正直…受けて貰えるかも分からなかったし、その先なんて考えてもいませんでした…でも…エミヤさんは確かに私の恋人になってくれた…そういう事で良いんですよね…?」
そう言うと彼は溜息を吐いた。
「ああ…しかし…本当に私で良いのか?」
「エミヤさんが良いんですよ…他の人はちょっと考えられないですかね…」
仲の良い男性サーヴァントなら他にもいた…クーさんにもエミヤさんと同じくらいお世話になったし…でもやっぱり私は…エミヤさんが良い…
「そうか…さて、君の気持ちが変わらないのも確認出来た…私はそろそろお暇しよう。」
「え!?もう行っちゃうんですか…?」
「一つ用が出来た…大丈夫だ…また何時でも会えるからな…」
「うう…分かりました。」
エミヤさんが立ち上がった。
「では、また明日。」
「はい…」