「なっ、何で当たりませんの!?」
そう叫びその端正な顔を歪ませ続けるセシリア・オルコット嬢
……何で?と言われても
「……」
私は何も言わない。……望まぬ試合とはいえどうせなら後学のためと思い代表候補生を名乗る彼女の力を早い段階から引き出すためちょっと軍で新兵を教育したときのノリで軽く煽った……当初は彼女が操るビット兵器に苦しめられた。が、私が慣れるまで時間はかからなかった
……彼女自身は複雑な挙動をビットにさせていたつもりだったんだろうが……実際はある程度パターン化した動きしかしていなかった……してそれからかれこれ五分はこの膠着状態だ……当人が疲れてきているのだろう。ビットの動きは更に単調になりつつあった……
「……ううううー……!」
セシリアが泣いてるように見えるのは気のせいだと思いたい……現実逃避は止めようか。
「……煽り過ぎたか……?」
そこに居たのは国を背負って立つ代表候補生……ではなくただ上手くいかないことがあって泣くだけの少女だった……仮にも代表候補生がここまで煽りに弱くたかだか五分程度で疲労困憊……一般的なアスリートはこの倍は走り回ることもあるはずだが……
「いい加減に落ちてください……!」
飛んでくるレーザーを危なげなく躱す
……私は別に並列思考が得意な訳ではない。余計な事を考えていても問題無いくらい余裕ということだ
……セシリアはビットに頼りすぎだな……その手に持つライフルは飾りなのだろうか?……恐らくセシリア自身の脳波に反応して動くビット兵器の制御に集中力を割かれ撃てないのだろう……それにしてもこのブルーティアーズというIS本当に実用機なのか?明らかに扱いづらく実験機の粋を出てないとしか評しようが無い……メインを躱されやすいビット兵器にリソースを割くなど無駄でしかない
……しかも操縦者のセシリアは扱いきれずもて余しぎみ。
「……ハアッ!ハアッ!……」
……これはさっさと倒してやるのが彼女のためだろうか……?
私は集中力の切れ始めてる彼女を後目に射撃兵装でビットを一機撃ち落とした
「……は?」
セシリアが何が起きたか分からないと言った表情で私を見る
……この状況で呆っとしていられるとは余裕だな
「…!どうやってこんな……!」
後を控える一夏のために場を暖めるぐらいの気持ちでいたが……ダメだな。まさかこうまで彼女が弱いなど想定もしなかった……元とは言え下を導く立場にあった私がしていい発言ではないな……
「……どうして…?どうしてなのですか……?何故一発も……?」
そして……この間も私は射撃兵装をビットに向け続けていた……