「じゃあ、次に来たのは?」
「…ナーサリーライム…もとい、アリスちゃん。」
「……」
人に聞いといてそこで黙られてもなぁ…
「……本格的な特異点修復に出るまで相当長そうだね…」
しばらく黙った後、そんな言葉が返って来た…う~ん…まだ甘いよ?
「ジャックちゃん来るまでも長かったけど、アリスちゃん来るまでにもかなり時間かかったんだけど?」
「子供好きとしては本望じゃない?」
「普通の状況ならね…でも、戦わなきゃならないから…私は二人をあまり戦わせたくなかったし…」
アリスちゃん…ナーサリーライムは戦力として見るなら決して弱くは無い…そもそもサーヴァントであるなら私よりは戦える…ジャックちゃんに至っては女性であるなら誰にでも優位は取れるし、敵であるなら容赦はしない(そういう意識をそもそも持ってないと言うのが正しいかな…)
「そう…」
「二人を前線に出すぐらいなら私が前に出る…囮なら私にだって出来るから…マスターとしては失格だけど…」
「マスターとしては間違ってるかも知れないけど…二人の母親としてなら正しいんじゃない?」
「……ジャックちゃんはともかく、アリスちゃんの母親にはなれなかったね…彼女はそれを望まないし、寧ろ怒られたよ…」
彼女を見た目通りの子供ではなく、サーヴァントにしてしまったのは私だ…最初は友達の様に接して来てくれた彼女は気付けば一歩どころか、二歩も三歩も引いて接する事が多くなった…私は…今でもその事を後悔してる…
「う~ん…」
「ちなみに君は?」
「ん?」
「どうせアリスちゃんもいたんでしょう?君は彼女とどう付き合って来たの?」
「…どうかな、少なくとも俺は親になるなんて出来無かったけど…」
「そりゃ普通は出来無いよ…私だってつい、そう口にはしたけど、本当にジャックちゃんの母親になれていたかは怪しいし…」
「…普通はなれないんじゃない?俺も母さんに聞いた事あるけど…俺を産んでからもしばらくは母親の実感なんてまるで湧かなかったって言うし…必死過ぎてそれどころじゃ無かったとも言ってたけど…」
「…私は母親じゃないならそれでも良かった…友達でも良かったの…でもあの子は線を引いたの…自分はサーヴァントで、私はマスター…一度線を引いたらもうそこから先には踏み込んで来ようとしなかったし、私もその線の先には行かせてくれなかったの…」
「…それを今でも気にしてる?」
「うん…サーヴァントには見た目が子供にしか見えなくても大人の頃の記憶を持っている人はいたけど、彼女はどう見ても子供だった…だからその通りに振る舞って欲しかった…でも…何時の間にか彼女は私の前にいた…何処までも私を守る存在として立つようになった…」
「…でもそれは君が気にする事じゃないね。」
「え…?」
「最終的にその関係を選んだのはナーサリーの意思なんだ…君がそれで罪悪感を感じるのは仕方無いかもしれない…だけど、その選択について君に責任は無いと思う。」
「そう割り切れたら良かったんだけどね…」
「ここから戻れたら…」
「え?」
「ここから君のカルデアに戻れたら…ちゃんとナーサリーと話し合ったら良いんじゃないかな?」
「何言ってるの…私はもう「戻れないかどうかなんて分からない。そう決めつけるのはきっとまだ早い筈だ」…何で、そう思うの…?」
「だって君、本当はまだ諦めて無いでしょ?」
「……」
その言葉が私の心の深い所まで届いたのが分かった…そうだ、口でどう言ったって変わらない…私はカルデアに戻るのを諦めたくなんて無かった…ここで緩やかな死なんて待ちたくなかった…でも…
「そうだよ。私は諦めてない…だけど方法なんて無い…私には何も「まだあるよ」え?」
「君のその呪いは…現代の魔術師にはどうにも出来無いんだよね?」
「うん「なら、大丈夫だ」だから…!何を言って…!」
「俺のカルデアには…メディアさんがいるんだ…あの人ならきっと…」
メディア…もしかして…
「コルキスの王女…裏切りの魔女メーディアの事かな?」
「あ、やっぱり知ってる?」
「定番だからね、ギリシャ神話は…でも本当に助けてくれるの?だって…」
「色々アレな人ではあるけど…間違い無く君の事を助けてくれると思うよ?」
「いや…だから何で…君が頼むから?」
「俺が頼むからって言うより…君だから助けてくれると思う。」
「意味が分からないんだけど…だって…会った事も無いんだよ?」
「う~ん…あの人さぁ…可愛い女の子が好きなんだよね…」
「は?」
「あ、男より女が好きって意味じゃないよ?」
「要するに猫や犬を愛でるのと同じ感じ?」
「近いんじゃないかな…特に着飾らせるのが好きなんだ……自分も美人なのに。」
「……」
最後のは小声で言ったけど私にはちゃんと聞こえていた…そう言う事を臆面も無く言うから毎回相手を増やすんじゃないかな…
「それは分かったけど…それで、結局何で?」
「いやだからさ…君は可愛いから…間違い無くメディアさんは助けてくれると思うよ?」
「……そう言う事を一応恋人のいる私に言う?」
「あ!?違うんだよ!?そうじゃなくて…!?」
一応私は彼を睨んではいるけど正直それどころじゃなかった…
……今、私は背中に視線を感じてる…それもかなりの殺気の込められた視線を…不味いね、この後の行動を間違えたらきっと私はこの視線の主に殺される…!
「…ま、聞かなかった事にしておくよ。」
「そっ、そう…」
……殺気が消えて行く…一応これで正解だったのかな…?…全く…この人やっぱり色々鈍いよね…どうしてこう、危機感って物が無いのかな…?