……彼女の話が終わった。
私は既に四本目となる煙草から吐き出される紫煙を眺めながら改めて考える
……軍人として戦うためだけに調整され造られた少女。
結果を出すことのみを期待されたが故に結果的に本人の自己表現方法も強さこそ全てとなった。
……兵士として高い素質を持ち上の期待通り結果を出し続けたがISの出現により転落した。……IS適合手術の失敗。左目の眼球にIS用のセンサーを移植した所……その瞳の色は金色に変わり見えてはいるものの余りに見えすぎて正常に物を見ることが出来なくなった。
……隻眼の兵士が現役復帰するのは難しい。彼女も片目が使えなくなったことでISの操縦は愚か今まで普通に出来ていたことまで出来なくなり優秀から一転して落ちこぼれの烙印を押された、か。
……この時点でまともな価値観を持つ人間なら怒るのが普通なのだろう。……だが、私には軍人だった前世の記憶がある……そのフィルターを通して見てしまえば……所詮戦場なら何処にでもよくある悲劇に過ぎない……
……そう断じる。そう言い切る事が出来てしまうのだ。
……客観的に見て戦争を体験したことも無い筈の真っ当な学生ならあり得ない倫理観に自嘲しつつ更に考える
そこで彼女の前に現れたのが我が姉織斑千冬と言うわけだ。……彼女に課した訓練内容をはっきりとは姉は語っていないが片目がまともに見えず遠近感覚が狂い日常生活すら困難な者に戦闘の仕方を教え込むのだ、生半可な事ではなかっただろう。
かくして彼女は尊敬すべき教官のお陰で優秀に戻った、と。
……姉のせいかどうか判断する前に一つ聞いておくことがある
「…なあ、姉さん……あんたはラウラという力しか拠り所が無くそれを失い自分を閉ざした少女の何になろうとしたんだ?」
「……何とは…?」
「ラウラにとってあんたはどんな存在だと思う?」
「…尊敬すべき師、敬うべき目上、見習うべき先達…こんな所じゃないか?」
「ラウラは多分、あんたを親、若しくは神に近いものとして崇拝している」
「……」
「…ちなみに…あんたラウラに俺たちの事を話した事があるか?」
「……話の流れでお前のことは話してないが一夏の事は話した事がある。何で教官はそんなに強いのかと聞かれたから守りたいものがあるからと伝えようとして……」
「そのときあんたは、しちまったんだろうさ、ラウラにほとんど見せたことの無かった優しげな顔を」
「……」
「あんたにそんな顔をさせる存在に嫉妬した。ラウラには他に寄り添う人間が居なかったから。それと同時に家族としての拠り所を求めつつあんたを信奉するラウラにはそれがあんたの弱さに映ってしまった。」
「……だから、一夏を排除しようとしたと…?」
「あのときは半ば嫉妬から来る短絡的な行動で自分の教官を弟だからという理由で自分から取り上げる存在が許せなかった。だから八つ当たりの一つでもしてやろうと殴りかかったが避けられて逆上し怒りのままに刃物を出した……ただ咄嗟に、こいつを殺せば教官は自分を見てくれると思ったのかも知れんがね……」
「……何てことだ…」
私は落ち込む姉を冷めた目で見ながら五本目の煙草を取りだし……これが最後の一本だったか……気にせず火を着ける
「……なあ、私はどうすれば良かったんだ…?」
私は上を向き自らの口から吐き出される紫煙を見つめながら答える
「…知らんよ。別にあんたが間違ってたと一概に言える話じゃないしな。そもそも当事者ではない私が口出せる話でもあるまい。……第一、一つ気に食わんのだ。何故あんたは私だけにこの話をした?本来この場には一夏もいるべきだった筈だ」
「そ、それは…」
「まあいいさ、そのお陰でこの件の解決にあいつが一役買ってくれそうだしな。」
「お前では駄目なのか…?」
「私には無理だ。この件は一夏にこそ適任だな。……これからあんたがする仕事は一つ。二人が全力でぶつかれる機会を作れ。私からはそれだけだ……後、一夏には全部終わったら話してやれよ、……ああ、もう一つラウラとも話し合え。……では、私は帰る」
私は足早に部屋を去「ああ~!?」れなかった
「お前一本とか言って残り全部吸ったな!?」
「……これもいい機会だ。禁煙しろ、姉よ」
そうして私は部屋を出る
「こら!待て!」
その日結局自分の部屋には戻れなかった……