謹慎三日目
「……何しに来たんだ?」
私は目の前の意外な来客に少し困惑しつつも敢えて淡白に声をかける……というか私の裁量でこのドアは開くのか……これでは罰則にならないではないか……と、現実逃避をしつつ。
「……許可は取っている。取り敢えず中に入れてくれ。ああ…こいつを押してくれると助かる。数日寝てただけなのにすっかり腕が鈍ってしまってな」
車椅子に座る眼帯をした小柄な少女がドアを開けた先にいた
外に出、無言で車椅子を部屋にいれ、ドアを閉める
「……いい匂いがするな」
「……昼飯の用意をしていたからな……食うか…?」
頷く少女に更に困惑しつつキッチンに戻り料理に戻る
……二人分になっても問題無いが……何故家の姉は来客を伝えてくれないんだ…?正直こういうサプライズは御免被りたい。
料理を持ってくると机に並べる。
……カレーだ。単に具を刻んで市販のルーを使っただけの物だ
「……美味そうだな」
「……味付けは中辛だが大丈夫か?」
中辛でも辛いのが苦手だと食べられないものもいる……私は多少辛めでも前世では平気だったが今世では少し抑えないと食べられなくなってしまった。肉体年齢に引っ張られているのかもしれんな……
「ああ。大丈夫だ」
「……そうか。…手を洗わなければならんな、車椅子を押した方が良いか?」
「ああ。頼む」
私はラウラの後ろに回り車椅子を部屋の流し台まで押していく
辿り着いたが良く見れば車椅子に座ったラウラでは手が届かないようだ。こちらに振り向き私を見詰めて来る
……そんな風に見ないでくれ。まあ、確かに彼女が自分の足で立てなくなった原因は私にあるが。
仕方なく私は彼女の身体に触れる
「……持ち上げるぞ?」
「……ああ。頼む。」
一応重さによる反動を考えて少し慎重に持ち上げたがその華奢な見た目に違わずこちらが思わず拍子抜けするほど彼女は軽かった。
……とても軍にいる女性の身体とは思えんな。
掴んだ部分は多少ガッチリしていたもののそれほど筋肉が付いてるようには思えない。最もかなり痩せ型(というより痩せすぎだな、これは……)のようで女性特有の柔らかさも然程感じ取れなかった。
彼女は蛇口を捻り手を洗う。
ややあって…
「……終わったぞ。下ろしてくれ」
「分かった」
私は彼女を静かに下ろすとキッチンに来る直前に取ったタオルを彼女に渡す。
手を吹き終わりタオルを私に返してくる
私は適当にタオルを放ると車椅子を押し机に戻ってくる
彼女を低いテーブルに合わせるためまた彼女を下に下ろす……あ……
「……このまま床に下ろしても大丈夫なのか…?」
「大丈夫だ。胡座をかいたりは出来ないがな。」
床に下ろされた彼女は足を伸ばして座っている……幸い彼女の足は余り長くないので私は普通に向かいに座れそうだ
二人で黙々と食事をする
「……で、結局何の用だったんだ?」
食事が終わり食器を片付けた私はラウラに聞く
「……教か……いや。千冬姉さんに許可をもらって挨拶をしに来た」
挨拶だと……いや。待て。今こいつは何て言った…?
「……織斑一夏にはもう伝えたがお前にも改めて伝えよう……」
そうして私が出したお茶を啜った彼女が次の瞬間言った言葉に私は頭が真っ白になった
「……私は昨日付けで正式にドイツ軍人の資格を剥奪された。そして身寄りの無くなった私は織斑家に引き取られる事になった。正式な手続きはこれからだが……まあこれからよろしくな、お兄ちゃん」
そう言って笑った彼女から目を反らしつつ私は姉に電話をかけたのだった