「なあ、何で私はここにいるんだ?」
「?臨海学校だからだろう?」
「私は謹慎処分だろうが。何でここに連れて来た?」
「お前だけ学校に残す訳にはいかんだろう?」
「私は授業に出られないんじゃないのか?」
「自由時間中は好きにしていいぞ?遊ぶなり何なり…」
「いやだから可笑しいだろう!?謹慎処分の人間が堂々と学校行事に参加してしかも授業に出なくても良いのに遊んでも構わないと言うのは!?」
「いきなり大声を出すな。良いから黙って座ってろ。」
しれっと宣う姉の頭をしばきたくなった。…さすがに他の生徒もいるここでは出来ないが。
……というか我がクラスメイトたちは私に対して何の蟠りも無いのか!?何時までもムスッとしている一夏が場違いになっているぞ!?あの時も思ったが被害者のラウラまで私に好意的だし……
ん?待て!私にマイクを渡すんじゃない!?歌わんぞ私は!?ラウラ!セシリアもか!?期待の眼差しを向けないでくれ……!おい一夏!?ここぞとばかりに囃し立てるんじゃない!なっ!?楯無!?何でお前がここにいる!?学年が違うだろう、お前は!?はっ!?デュエット!?だから歌わんぞ私は!?おい!?腕を組むな!その脂肪の塊を押し付けるのを止めろ!セシリア!?対抗するな!?おい!?私の意見は無視か!?
私は狭いバスの中、目的地に着くまでずっと叫んでいたのだった……
「全く。何だと言うのだ……」
「お前、自分がどれだけ慕われているのか自覚が無かったようだな…」
「クラスメイトたちには多少厳しく所か、かなり上から物を言ったりもしたからな、嫌われているとばかり思っていたんだが……」
「女尊男卑思考の連中にはともかく殆どの連中には受けが良いんだぞ、お前は。」
「……」
千冬の言っている事は理解出来ない。私は古い価値観で物を言ってしまったと寧ろ反省していた程なのだが……
「ところでお前は遊ばないのか?クラスメイトと親睦を深めるチャンスだぞ?」
「仮にも謹慎中の人間に何を言っている。」
「それは建前だ。何度も言ったようにお前の罰則はあくまで授業に出ない事、だ。」
「だからそれが可笑しいと言ってる。…大体遊ぶと言ったって何をしろと?まさか臨海学校に行く事になるとは思ってなかったから水着も用意してないぞ?」
私は前日の夜普通に布団の上で寝ていて今朝目を覚ましたら既にバスの座席の上だった……当然着の身着のまま。荷物は何も無い……これではほぼ拉致ではないか……
「お前の着替え等の荷物は全て私と一夏で用意した。後、ほらお前用の水着だ。」
千冬の手にあったのは袋に入ったままの新品の海パン。……特に特筆する事の無いシンプルなデザインのトランクスタイプの海パンだ。
「誰が用意したんだ、これは。」
「一夏だ。後でちゃんと礼を言っておくんだぞ?」
「……」
「ほれ、とっとと行ってこい。」
「ここまでお膳立てされたら仕方無い、か。分かった、行って来る。」
私は渡された水着を持って渋々着替えに向かった。