そう言えば私は何処で着替えれば良いんだ…?
旅館の廊下を歩きながら考える。
そう、ここは旅館であり海の家では無い。
更衣室の様なものがあるとも考えにくい。
「……」
今日ここがIS学園の貸し切りになっているのは千冬に聞いた。
当然IS学園の生徒以外の者が歩いている事は無いだろうし恐らく大半が海にいるんだろうから出会わないのは分かるがまさか従業員にも会わないとは……参ったな、従業員がいれば着替えに使える場所を聞いたのだが……
「…海に着いてから着替える場所があるかもしれんし何ならトイレの中で着替えても良いが……」
下のパンツを海パンに履き替えて置けば海に着いてから脱げば問題は無い事に……!
「隙あ…!……ちょ!?待って待って!タンマタンマ!…!ぐえっ……」
柱の陰から何を思ったか気配を消して(るつもりで)飛び掛って来た水着姿のアホを躱し、殆ど条件反射的に絞め落とす。……何がしたかったんだ、こいつは……
「……従業員や生徒がいなくて良かった…」
見られていたら私は吊し上げ、だ。
私は気絶させた楯無を取り敢えず人の気配の無い適当な部屋の襖を開け中に蹴り込む。……顔面から畳に落ちたが奴は目覚めない。……私は無言で襖を閉めた。
海に行く前から精神的に疲れたのもあってか結局従業員に聞くのも何となく面倒くさくなりトイレで海パンを履いた。……ついでに道中で見つけた埋まったウサ耳に上から足で砂をかけ見えなくなるまで完全に埋める……こういうのを放っておくと後でもっと面倒な事になるからな…
「クソ兄貴!ISでは負けたけど今回は勝つからな!」
「……」
何で私は海まで来て一度も泳ぐ事無く一夏からビーチバレー勝負をしかも一対一で挑まれなければならないんだ…?……まあ、良いか。
「…良いだろう、相手をしてやる。」
盛り上がるギャラリー…貴様らは泳がんのか…?わざわざこんな物を目を輝かせて見る事も無かろう……
ちなみに勝敗は途中で乱入して来た千冬のせいで有耶無耶になった。
「どうだ?楽しかったか?」
「…あんたが暴走しなければ普通に楽しめたんだがな。」
「……」
影を背負う千冬……こんな事を話したい訳じゃないんだが……
「凹んでる所悪いが厄介事になるかもしれん……」
「…ん?何かあったのか?」
先程とは打って変わって真剣になる千冬……普段からそうしてくれ……
「…篠ノ之束がここに来ているかもしれん。」
「!本当か?」
「あんた何も聞いてないのか?」
「…あいつから特に連絡は無かった。…あいつがここにいる根拠は何だ?」
「…ウサ耳を見た。ご丁寧に目立つ所に埋められてな。…彼女とは限らないが警戒した方が良いんじゃないか?」
「…成程。気を付けておく。」
「明日の午前中は授業だろう?私は出られないが現れるとしたらそこだろうな……」
私は嫌な予感が当たらない事を祈りながら眠った。