「…で、こんな夜中にお前らがやって来たのはそれが理由か?」
「…ああ。悔しいんだけどどうしても良い手が浮かばなかった…」
臨海学校から帰って来てから数日経った日の晩、私の部屋を一夏とシャルル、もとい最近正体をバラしたシャルロット・デュノアが訪れていた。
「…元とは言えスパイを助ける義理は無いが?」
「……」
「…兄貴!シャルだってやりたくてやってた訳じゃないんだぞ!?」
「…そもそも特記事項を盾にした所で卒業後はお前はフランスに引き渡される。…保留にしたのはいいが今後の当ても無いのにそうしたのか?迂闊にも程があるな…」
「…だからそれを何とかしたいって言ってるんだろ!?」
「…一夏、もういいよ「何言ってんだよ!?シャルは元々何も悪くないだろ!?」……」
「…一夏、一度スパイ行為に加担した以上それは通らんぞ?」
「何だよ!?兄貴も千冬姉と同じ事言うのか!?」
「…今は夜中だ、防音はされてるが余り騒ぐな…自由になりたいなら何も方法が無いわけじゃない…」
「……あるのか?」
「…デュノア、帰る場所を失う覚悟はあるか?」
「……もう僕に帰る場所なんて、無い。あそこは僕の居場所じゃない…」
妾の子だというこいつの立場に思う所が無いわけじゃない。だがそもそも私は関係無い。助言はするが事を起こすなら自分でやってもらわなければな…
「…なら問題無い。デュノア、お前の所の会社の違反材料を集めてマスコミと捜査当局にリークしろ。そうすればお前は内部告発者としてある程度の人権は保証される。」
「何言ってんだよ兄貴!?シャルにそんな事「デュノアが自由になるには他に方法は無い。」…畜生!」
「…それに…デュノア、お前も気づいていただろう?他に方法は無いと。」
「…はい。」
「…話は終わったな、そろそろ帰れ…どうせお前らろくに許可も取らずにここにいるんだろう?さっさと帰れ。余計な処分を受けたくなかったらな。」
「…チッ!兄貴に頼った俺が馬鹿だったよ!行こう、シャル…俺がもっと安全な手を考える。だから心配するな。」
「…うん、ありがとう…一夏…。」
出来もしない事を簡単に口に出すものじゃ無いぞ一夏…
出て行く二人に背を向けて座る…さて…
「…楯無、聞いていたな?」
「…助ける義理は無いでしょ?」
隠れていた楯無が顔を出す。そもそもこいつが今夜の先客だった…と言うか結局私は仕事を手伝ってしまっているな……これでは一夏に甘いとは言えんではないか……
「…彼女の話に同情はするけど。更識家は元より、私の利益にもならないからね。積極的に手を貸す理由は無いわ。」
「…家族の頼みでもか?」
「!…ずるい言い方するのね…でもそれとこれは別。」
「そうか。まあ無理にとは言わん。」
そもそも私にも無関係の話だ。結論を出した私はしまい込んだ書類を引っ張り出した。