「…私は”二人だけ”でと、言ったつもりでしたが…。」
「馬鹿か、お前は?立会人のいない試合など認める訳ないだろう?」
「…それは、まあ確かに。ですが、一夏たちは何故いるんですか?」
「後学の為だ。こいつらはお前が専用機持ちなのは細かい事情はともかく一応把握しているから問題無かろう?」
一年生の専用機持ちが全員いるんだが…楯無までいるし……
「…予定外ではありますが始めますか?」
「私は何時でも良いわよ?」
余裕な事で。……勝てないのは分かっている…が、これでも元は軍人だった身でもあるし精神年齢は彼女を超えている。…大人気無いのは分かっていても腹は立つものだ…。
「…キャッ!?」
「……」
つまり油断している彼女に開幕と同時にワンパン入れるのは当然の権利だと言いたい…いや、実際は蹴りだが。
「(くっ!油断した!距離を…!)「させると思いますか? 」ちょっと!?」
逃げようとする銀の福音に取り付く。
「何のつもり!?」
「…おや?白兵戦のご経験はおありではありませんか?」
「…!まさか…!」
「取り敢えずこっちの息が切れるまでは付き合って貰いましょうか?」
私は拡張領域からナックルガードを取り出す……整備課にこいつが転がっていたのを見た時は何の冗談かと思っていたのだが……使う時が来るとはな…。
「やっ、やめて…!」
「貴女が望んだ事でしょう?では、行きますよ?」
私は右腕を振り上げた。
「…結局ISが解除されるまで殴り続けるとはな…やり過ぎじゃないのか?」
「専用機持ちたちには全く参考にはならないでしょうが……私もああも余裕かまされれば腹も立ちますよ。まぁ…殴り続けてる間こっちのSEも減っていたために勝ちは拾えませんでしたが、ね。引き分けですから私も溜飲は下がります。」
「…しかしだな…」
「彼女にとっても良い薬では?まさか、気絶するとは思いもしませんでしたけど。」
「あんな戦い方は想定してないだろうからな。」
「それはまた、甘い事で。」
モビルスーツ乗りにもそんな奴がいたな。純粋な殴り合いは苦手と言う奴だ。
「…取り敢えずファイルスには謝っておけよ。」
「…まぁ思う所が無いわけでも無いですからね。彼女が気が付いたらそうさせてもらいますよ。」
私はピットを出た。
「クソ兄貴!」
一夏が殴りかかって来る。ハア…またか。
「…そう何度も食らってやれん。」
私は拳を左手で流すとそのまま腕をとり投げた。
「うわぁ!」
「……」
受け身すら取れんのか…。
「…何の真似だ、一夏。」
「くそっ!それはこっちのセリフだ!何であんな戦い方したんだよ!?」
「彼女のISと真っ向から挑んで勝てる訳が無かろう?それはお前も良く分かってる筈だ。」
「…!だっ、だからってあんなやり方…!」
「なら、他にまともに戦える方法があったのか?私の専用機はお前よりも更にスペックが低いんだぞ?」
最もブレード一本しか使えない白式よりは凡庸性は高いかもしれんがな。
「大きな口を叩く前にもっと戦い方を考えろ。お前はどうせ、銀の福音に負けた理由も良く分かって無い筈だ。」
私は一夏を放置してその場を後にした。