ネタ帳   作:三和

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偽黒の剣士2

夕食を食べ終わり私に甘えそのまま膝の上で寝てしまった弟の頭を撫でながら私も気付くと微睡んでいた

 

 

ソードアート・オンラインというゲームの名前については知っていた。血の繋がらない弟がそれのテスターに選ばれたことも。

 

私自身は最近両親も忙しいしたった二人しかいない姉弟間の会話が減ったことは残念だったが今回に限らずゲームに嵌まってからこの子は本当の意味で笑うことが増えたように思う。

 

両親と共に事故に遭い両親だけが亡くなり家に引き取られた男の子。

彼は表面上少し陰を背負って見えるものの特に変わった所は無さそうに見えた。

 

彼とはきちんと面識があり向こうも事故に会う前から私を本当の姉のように慕ってくれた。とはいえ当時私もまだ幼く余り彼の事を構えなかったけれど。

 

そして家に引き取られたとはいえその関係性は余り変わらないだろうと思っていた。その認識が改まったのは引き取られてすぐの事。

 

元々私の両親は帰りが遅く私と彼は家で二人きりの事が多かったのだがお互いまだ幼いとはいえそもそも部屋は別けているし別段問題が起きる筈もない。

 

ただその晩はいつもと違った。夜中にトイレに起きた私の耳に彼の部屋から悲鳴が聞こえ飛び込んだ私の目に映った光景は……悲鳴をあげながら泡を吹く義弟の姿だった。

 

狼狽えているとちょうど母親が帰宅したためそのまま病院に直行。

 

そんな事がしばらく続いた。

事故の事を夢で見たり、突如再生されるフラッシュバック現象。幼くしてそんな症状に悩まされる彼のために主に尽力したのは私だった。

 

両親を責めるつもりは無いがどうしても家に居ない事の多い二人の代わりに私が忙殺されるのは自然の流れだった。

 

一緒に居て楽しいことより辛いことの方がずっと多かったし出来るだけ彼と一緒にいることを優先したため友人も減った

 

残った友人も色々協力はしてくれたけどやはり辛くはあった。

でもその甲斐あってか彼は段々と昔のような笑顔を見せるようになっていった。

 

その後私の後を追うかのように祖父から剣道を習い始めた。私より才能はあった彼は惜しいことに祖父が亡くなってすぐにゲームに嵌まり始め竹刀を握ることは無くなった。

 

そして彼との会話は少し減った。私自身中学に入って部活が忙しくなったせいもあるけど。実際朝も辛いだろうにわざわざ朝早くに起きて朝練に向かう私の見送りも良くしてくれたし(最もその後二度寝して本人は学校に遅刻するというパターンが多くなったため結局止めさせたが。)

 

まあそんなこんなで会話の減った私たちの間で久しぶりに長く交わされたのが件のゲームの話というわけだ。

 

「スグ姉ちゃん、ソードアート・オンライン一緒にやろうよ!」

 

「あ~…もうすぐ正式サービス開始日なんだっけ?う~ん……正式サービス開始日は特に用事はないかなあ……」

 

実際は予定ありきなのだが弟からの誘いだ。出来れば一緒にやりたい。

 

「でもまああれ高いからね~。さすがに二台も買ってくれるかは分からないかな。」

 

私のお小遣いの大半はおしゃれには余り気を使わないものの主に剣道関連とスイーツに消費されてたりする。

 

「じゃあ俺から頼むよ!」

 

二人は彼を溺愛してるので恐らく二つ返事でOKするだろう。私は苦笑いをしながら……

 

「なら、大丈夫かな。楽しみだねカズ君。」

 

「うん!」

 

嬉しそうな弟の顔を見て私も顔が綻ぶ。

……彼は笑うようになった。でも実際は……彼は嫌なことがあっても作り笑顔をする。

しかも彼と付き合いの少ない人は分からないだろう完璧な笑顔。

 

……そんなこの子に過保護気味になるのも仕方無いよね……

 

私は今は本心から笑っている弟を見ながらそんな事を考えた。

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