「……何、してるの…?」
私は今見たものが信じられなくて彼に問いかけた。
「……本当にごめん。」
そう言って彼はその場から消える。……一瞬驚いたけどたまたま私には心当たりがあった。キリト君に聞いた覚えがある。隠蔽スキル……その場で姿を認識出来なくして主にモンスターをやり過ごしたり犯罪行為等にも使える凡庸性の高いスキル……でも……
「……コペル君、そのモンスターには効かないみたいだよ……」
大量のネペントに囲まれるのを何処か他人事のように認識しながら私の視線は私から離れて近くの草むらに向かう何体かのネペントに向いていた。……多分あそこにコペルがいるのだろう。
「……何でこうなったかなあ……」
多分私の甘さのせいだ。私は彼を信用し過ぎた。これはその罰なのだろう……
「……」
私は危機の迫る中何処か凪いだ気持ちで剣を振るう。ソードスキルに頼らずネペントの攻撃を流し反撃し徐々に体力を削って行く。本来なら取り乱す筈の状況で私は今までで一番頭が回って、今までやって来たどの試合の時よりも良く動けていたと思う。
……ガラスの割れるような音が聞こえた。
今まで私から離れていたネペントたちがこっちにやって来る。
「……そっか。死んじゃったんだね、コペル君……」
……私はいくら騙されたからと言ってその死に何も思わない程薄情だったのだろうか?
「……」
私は思考を切り替え目の前のネペントを見る。集中を切らせば死ぬ。死にたく…無い。
「……死にたく無いから殺す。死ぬのは、怖い。」
私はコペル君の気持ちが分かった気がする……ああ…君も怖かったんだね。
「……でも私だって死にたく無い。死ぬのは怖い。例え貴方が死んでも私は生きる。」
他の誰が死んだって私は死にたく無い。私は死なない。キリト君も死なせない。他を殺しても。
「……まだいるの……」
たかがゲームの戦闘と侮ったかもしれない。キリト君にも言われていたけど思ったより疲労を感じるみたい……
「……あっ…」
集中が切れる。攻撃を流し切れず食らってしまう。
……思ったより減ってしまった。
「……ポーションを使う暇は無い。」
敵の猛攻が激しくて飲む暇は無い。そもそもポーションを飲んでも即時回復はしないから……
「……あっ…」
一度崩したリズムを戻すのは難しい。私は流せなかった攻撃を咄嗟に剣で受けた。
「……!そんな……」
剣が砕けた。
「……耐久値の限界……」
ここまで修復もしないで使っていたせいだろう。とうとう限界が来てしまった。……予備はあるけど出す暇は無い。
「……ごめん、キリト君……」
私は向かってくるネペントの攻撃に対して目を閉じ身を委ねる。
本当にごめん。キリト君……
「……リーファ姉ちゃん!」
その声が聞こえた瞬間私は目を開けた
私の背から小さな影が飛び出すと私の前に立ちネペントの攻撃をその手に持つ剣で防いだのが見えた。