「……」
気が付くとあれだけいたネペントはいなくなっており私はその場で座り込みキリト君は仰向けになっていた。
「……あっ……」
視界の端に見えた物……あれってもしかして……
「……花付きもかなりの数倒したから……」
同じ物を見たのだろうキリト君のそんな声を聞きながら私は何とか立ち上がりほとんど足を引き摺るようにしてその場所へ向かう。
「……」
いつの間にか横にいたキリト君とそれを拾いメニューを開きストレージに仕舞う。……リトルネペントの胚珠……コペル君……君が協力してくれていれば君も今頃これを私たちと手にしていたんだよ…?
「……帰ろう、姉ちゃん……」
「……うん。」
……キリト君は何も聞かない。私にはそれがとてもありがたかった……。
戦闘を避けホルンカに戻る。
「……キリト君、多分大分遅い時間だけど大丈夫なの…?」
私としてはゲームの世界でも夜遅く他人の家に向かうのははばかられたので聞いてみた。
「……大丈夫。時間が遅くてもイベント自体は進行するから……まあ俺も正直行きづらいけど……こんなに時間かかるなんて思ってなかったからなぁ……」
私たちは疲れもあり重い足取りでその家に着く。
「……じゃあ俺が先に行くね。」
「……分かった。待ってるね……」
イベント戦闘自体は協力して出来てもイベント開始と報酬を貰うのは同時には出来ないそうなので二人別々に家に入る。
……しばらくしてキリト君が家から出てきた……?どうしたんだろう…?
「……終わったよ…リーファ姉ちゃん……」
「……キリト君、何かあったの…?」
さっきまでの彼はただ疲れた顔をしていただけだった。……でも今の彼は……
「……何でも無い……いや。行けば分かるよ……」
彼にそう言われ首を傾げながら家のドアを叩く。……返事が聞こえたので中に入った。
中で待っていたおばさんに声をかける。
「……胚珠を手に入れて来ました……」
「…!ありがとう、剣士さん。これで娘も……」
そう言って彼女は奥に行き、少しして戻って来ると……
「……これをどうぞ……お礼です。」
私はその剣を受け取った。……アニールブレード……これが……
「……ありがとう、ございます……」
私はその剣を受け取り取り敢えずストレージに入れた。
……おばさんはもう私から離れキッチンで何かをしている。……やがて鍋の中の物を底の深い皿に入れると部屋の戸を開け中に入って行く……
「……ちょっとだけ……」
悪いとは思ったけど私はおばさんが何をするのか気になってついその戸を開け中の様子を覗いた。
「……!……そっか、キリト君……」
そこにはベッドに寝ていたおばさんの娘らしい女の子がいて笑っていた。おばさんも女の子を見て笑っていた。
……カズ君には本当の親はいない……両親は二人とも彼を残して死んでしまった。……カズ君は私のお母さんの事を未だに叔母さん、お父さんの事を叔父さんと呼んでいる。……お父さんは仕方の無い事と割り切っているけどお母さんはそう呼ばれる度にショックを受けている。……私から言わせれば二人とは接点が少ないから当然とも言える……。……まあそれはともかく……
「……キリト君……」
本当の両親が生きていて現実に帰れさえすれば会う事も出来る私と違って現実に帰れても二度と本当の両親に会う事の出来ないカズ君にとってこの光景は酷ともいえる……私はそっと部屋の戸を閉じそのまま家の中を抜け家の外へ……
「……終わった…?」
彼はそこにいた。
「……キリト君……」
私は彼を抱き上げた。
「……え!?なになに!?「キリト君……辛い時は泣いても良いんだよ……?」!」
さっき家から出て来た時彼は今にも泣きそうな顔をしていた。……しばらく躊躇していたみたいだけど彼はやがて私の胸に顔を埋めて嗚咽を漏らし始めた。
「……行こう、リーファ姉ちゃん。」
「……うん。」
ホルンカの村で少し休憩を取った私たちは漸く次の街へ向かう。その身に新しい剣を身につけて。