何度目かの交錯の後キリト君の攻撃によりコボルトロードは消えた……その場に尻餅を着くキリト君の元へ向かう
「……リーファ姉ちゃん……」
「……終わったんだね…?」
「……うん。終わった……俺たちは勝ったんだ。」
……それは決して大きな声じゃなかったけどキリト君の一言に呼応する様に場は高揚に湧き喧騒に包まれていった。
「……終わったわね。」
「……アスナさん……その……顔出しても良いんですか?」
「……え?あー…良いわ、もう。」
「……Congratulation.やったな。この勝利はお前らのモンだ。」
「……エギル…サンキュー。でもそれは違う。」
「……皆が頑張ったからですよ。だから勝てたんです。」
「……そうね。」
「……そうだな。」
場が勝利に湧く中その叫びは一際大きく響いた。
「……何でや!何でディアベルはんを見捨てたんや!」
キバオウさん…?見捨てるって?
「……何を言ってんだ?」
エギルさんが聞いてくれる。
「……だってそうやろがい!そのガキはボスのスキルの事知っとったやないか!その情報を伝えといてくれたらディアベルはんは死なずに済んだんや!」
「あのガキ、ベータテスターか。」
「……そういやあのガキがボスに止めを刺したんだよな?ラストアタックボーナス狙いじゃないか?」
「んじゃあリーダーの手柄を横取りしようとしたって事か?」
「そうに違いねぇ!ガイドブックもベータテスターが書いたんだよな?やっぱりベータテスターが情報なんて渡すはずがなかったんだ!」
……場はあの会議の時より白熱したベータテスター叩きの流れへ……それにここにはテスターであるとはっきり判明しているキリト君がいる。……このままじゃ……!
「……アハハハハ!」
キリト君が今までに無く大きな、そして明らかに悪意の篭った声音で笑った。
「キリト、君?」
「……ベータテスター……そんな連中と一緒にしないで欲しいな。あいつらはさぁガキの俺より大した事無かったんだ。戦い方も何もかも。今ここにいるあんたらの方がマシなくらい酷かったんだよ……!」
皆が黙りこくった。……キリト君何を考えているの…?
「……俺があのボスのソードスキルの事を知ってたのはベータテスターだからじゃない。あれはもっと先の階で出てくるソードスキルでさぁ俺が他のベータテスターより上の階に行ってたから知ってたんだよ!つまり俺はベータテスターなんかよりずっとこのゲームの事を知ってるんだ!」
「……何だよそれ…!そんなのチータじゃないか…!」
「……そうだ!ベータテスターのチータだからビーターだ!」
「……へぇ…!」
キリト君はさっきボスからドロップしていたコートを装備し始めた。黒いコート……
「……ビーター……良いな、それ……!これからは俺の事はビーター…そう呼んでくれ。ベータテスター何かと一緒にすんなよな……!」
そう言って階段で上に向かうキリト君を慌てて追う!
「……ちょっ、ちょっと待てよ!」
「……アクティベートはしといてやる。俺を追うなら新しい階でモンスターに殺される覚悟はしとくんだな……!」
声をかけた男の人と同じく気圧されたけど私はキリト君を放って置くつもりなんて無い。
「……リーファちゃん」
アスナさんが私に声をかけて来た……そう言えば名前を呼ばれるのは初めてだな。
「……何ですか?」
「……キリト君の事頼むわね。」
「……当たり前です。私の……大事な弟ですから。」
アスナさんなら言っても良いだろう。それにこの場で言ってしまえば私もキリト君の関係者だと思ってもらえる。
「……リーファ……」
「……エギルさん…」
「……頑張れよ。」
「……はい。」
私の今一番欲しい言葉をくれた。
私は階段の先のキリト君に声をかける。
「……キリト君。」
「……リーファ姉ちゃん……俺……」
「……行こ!キリト君!」
私はキリト君の手を引く
「…!わっ!?姉ちゃん引っ張らないで!」
これからの事は分からないけど私はキリト君と一緒にいる!何があっても最後まで!
……私はそう誓った。
「……いけない!寝ちゃってた!」
私は辺りを見回す。……私とキリト君のホームだ。目の冴えてしまった私は膝の上のキリト君をひとまず下ろす。
「……懐かしい夢を見たなあ……」
あの後キリト君はビーター、そして私はそんなビーターの姉としてしばらくの間無条件に轟く悪名に悩まされた。……私たちに関して正しい情報を知ってるアスナさんやエギルさん、後に攻略組に入ったクラインさんたちのお陰で何とか悪い噂はある程度消えたけど……
「……もう遅いかな……」
あの頃ビーターではなく攻略組最強プレイヤー黒の剣士として名を馳せたキリト君はもういない。……今のキリト君は……
「……PoH……!」
……あいつのせいで今のキリト君は……!
「……リーファお姉ちゃん何処…?」
キリト君!私はキリト君の方へ向かう。
「……キリト君!」
「……リーファお姉ちゃん!」
泣きながら私の腰にしがみつくキリト君を上から抱き締める。……今のキリト君の精神は実年齢より明らかに幼くなってしまった。……PoH……レッドプレイヤーの生まれた元凶……あいつさえいなかったら……!
「……キリト君……私は絶対君を現実世界に帰してあげるから……!」
PoHを殺しキリト君をこの命に替えても現実世界に帰す。それが今の私の誓いだ…!