「……姉ちゃん……俺、サチと付き合う事になったんだ……」
サチさんが姿を消した次の日。私はキリト君からそう告げられた。
昨日サチさんを見つけ出したのは何となく予想出来たがキリト君だった。……その後のキリト君は普段には無い真剣さで次にやって来た私に二人きりにして欲しいと言った。その頼みを聞いた私はケイタさんたちを説得しサチさんの事をキリト君に任せた。
……二人の話が終わり戻って来たサチさんは凄く吹っ切れた顔をしており明日改めて話がしたいと告げその時は心配をかけてごめんなさいとだけ言い私たちはサチさんを伴い宿屋に戻った。
……これが昨夜の顛末である。
本来なら私は反対したかもしれない……でも…
「……そっか。良かったね、キリト君。」
……命懸けの世界で芽生える物は歳の差なんか関係無く本物だと思いたい。それに……実は私はキリト君がサチさんに惹かれているのは気付いていた。……ただ気になるのは……
「……ねぇ、キリト君?それでどうするの?」
「……取り敢えずギルドには正式加入しなきゃならないけど……」
……私たちは実は仮メンバーのままである。……正式加入したら本当のレベルがバレちゃうからね……
「……それもあるけどさ、これからどうするの?」
「……」
「……私たちはさ、攻略組だよ?そろそろ攻略に戻らないといけない。……もちろんこのギルドを攻略組に引き上げるならここに残る大義名分も立つけど……」
「……」
このギルドは正直これから先どれ程時間をかけても攻略組に上がれるとはとても思えない。……ケイタさんは攻略組はその意思さえあればなれるって言ってたけど……私から見てもその意志力自体も足りてない……これをいくら言っても理解出来るとはとても思えない。
「……キリト君、私だけ戻ろうか?」
「……それは…」
「……キリト君も分かってるでしょう?ここの皆は頑張ってるつもりだけど全然足りない。多分攻略組には上がれない。……そもそもスタートの段階から違うんだよ……」
「……姉ちゃん……俺……」
「……私は待ってるから。自分で、答えを出して。」
「……分かった。取り敢えず皆にサチとの事を伝えて来る。……サチと約束したから……」
「……うん。行ってらっしゃい。」
……キリト君には伝えなかったけど……懸念事項はこれだけじゃなかった……
キリト君とサチさんが付き合う事になって皆は祝福してくれた……一人を除いて。
ケイタさん……キリト君はサチさんばかりを見ていたから気付いていなかったみたいだけど、私は気付いていた。……彼はサチさんが好きなのだと。……この事実は多分私とサチさんを除く月夜の黒猫団全員が知っていた筈だ。それでもキリト君とサチさんを祝福する皆を見て嬉しく思うより逆に不安になったけどもう私はキリト君にこれからの事を任せると決めたから。
その後私はまだ自分の正体を告げられないキリト君の為にそれとなく考えた言い訳をしてギルドを抜けた。……私は信じていた。キリト君がこのギルドを守る事を。そして、そんなキリト君をサチさんが支えてくれる事を。
……そんな私の期待は裏切られた……