「…それでよ…ん!?わっ、悪ぃ、リーファ…見なかった事にするから「クラインさん?わざとらしい事しなくてもわかってますよ?本当はもっと前から居ましたよね?」……」
アスナさんの方を見たままやって来たクラインさんにそう声をかける…顔を出しづらかったのは分かるけど、だからってずっと覗いてたのは許せない。
「…悪ぃ「謝罪は良いんで答えてください…何時から…そこに…?」その…オメェが…飯食って笑ってた時から…」
「ほとんど最初からじゃないですか!?」
嘘でしょ!?そんな前から隠れてるくらいならちゃんと言ってよ!?…確かにそこで声をかけて来たらアスナさんとまともに話も出来なかったかもしれないけど…うん、これは…駄目だね…有罪…ギルティ。
「殺る?リーファちゃん?」
「…物騒ですよ?アスナさん…でも、同感です。…という訳で…そこを動かないでくださいね?風林火山の皆さん?」
アスナさんの手を離すと逃げようとしていた風林火山の面々を抜いて先回りする…逃がすわけない。
「おっ、おい!?待てよ、リーファ!?マジで俺たちを殺す気なのか…!?」
「大丈夫です。ここは安全地帯圏内…ノックバックはしてもHPは減らないし、モンスターはPOPしない。…そして私の索敵スキルで見る限り他のプレイヤーも居ない…それじゃあ始めましょうか、クラインさん?」
「なっ、何が大丈夫なんだ!?謝るから勘弁してくれ!?」
「ダメです。」
…後にクラインさんたちの上げた野太い悲鳴が迷宮区の怪奇話として語られている事をアルゴさんに聞くのだが…まあ、これはどうでもいいね…
「……」
「ほら、寝たフリしてないで起きて下さいクラインさん。」
「…イテッ!?リーファオメェ散々人ボコボコにしといて更に蹴り入れ「痛みは無いから問題無いじゃないですか。…それとも仮にも攻略組がノックバック程度でどうにかなるとでも?」クソッ…!覚え「何か言いました?」いやっ!?何でもねぇよ!?」
……一応聞こえてるんだけどね?クラインさんには一応、い・ち・お・う少しはお世話になってるから不問にしようかな?…そうでなくてもアスナさんと散々攻撃したしね…
「…なぁリーファ?」
「何ですか?」
「…いや、何でもねぇよ。」
「何ですかそれ?」
もう…人の顔見てそんなに声上げて笑わないでよ…もう一回斬ろうかな?
「皆!軍よ!」
アスナさんがそう叫んだのが聞こえた…取り敢えず道は開けたけど…軍?…しばらく首を傾げてるとクラインさんが耳打ちしてくれた。
「忘れたのかリーファ?…アインクラッド解放軍だよ…覚えてねぇか?」
「…あっ!」
クラインさんにそう聞かされ漸く思い出した。
嘗て…あのキバオウさんが作ったギルド、アインクラッド解放隊…二十五層で壊滅寸前まで行った後、一層に存在する情報ギルドMTDを吸収し大規模ギルドとなった…でも…何で今更迷宮区に?もうずっと一層を拠点にこの世界の治安維持しかやってないって聞いたけど…
軈て鎧を着込んだ物々しい集団が見えて来た…
「全員一旦休め!」
リーダーの人らしき人の号令で他の人たちが座り…いや、ほとんど皆倒れ込んでるね…どんな無茶したらこうなるの?…私も人の事言えないけどさ…
「…この隊の隊長を務める中佐のコーバッツだ。」
中佐…本当に軍なんだね…
「血盟騎士団副団長のアスナよ。」
…歳上の大人にも怯まず堂々と自己紹介をするアスナさんに感心しているとコーバッツさんの視線がこちらを向いた…いや、私の自己紹介要る?…自分で言うのも何だけど…割と有名だと思うんだけど?…大体何でクラインさんの方を全然見ないの?この人だって小規模だけど精鋭ギルド、風林火山のリーダーだよ?
…あーもう…しょうがないなぁ…ついつい完全に自分の物になってしまった二つ名、黒の剣士を口に出しそうになってしまった…これ、一応キリト君の為に考えたのになぁ…
「…同じく血盟騎士団のリーファ…別に役職はありませんよ?平です。」
「…風林火山のリーダー、クラインだ。」
自分の方を見ないコーバッツさんにあからさまにイラつきながらそう自己紹介するクラインさん…いやいや…遅いよ?…それなら私が自己紹介する前に言って欲しかった…そしたら多分、私は自己紹介しないで済んだはず…
「貴殿らはこの先の攻略を終えているのか?」
そう考える私を他所にコーバッツさんは話を続けて来る…
「いえ。今は休憩中よ。」
「…ならば後は我々に任せて帰るといい、ああ、一応ここまでのマップデータを提供願いたい。」
「なっ!?テメェ!マップデータ埋めるのがどれだけ手間か知ってやがんのか!?」
「我々は貴様らの為に攻略を進めているのだ!それくらいは当然の義務であろう!」
ほとんどコーバッツさんに掴みかかる勢いのクラインさんを止めると私はメニューを開いた。
「どうぞ。持って行って下さい…すみませんアスナさん、勝手に決めて…でも街に戻ったら公開する予定ですし良いですよね…?」
「私は構わないわ。」
「なっ!?良いのかよ!?」
「マップデータは平等に開示されるべきものですから…それに、これで攻略が進むなら私も構いません。」
「…協力感謝する「あの!」…何だ?」
これは言っておかないとね…
「…部下の人たちはもう限界です…ここで長めに休みを取るか、一度拠点に戻るべきだと具申します。…多分そろそろボスの部屋も近いでしょうし…」
…正直この人たちがボスに勝てるとは思えないけどね…そもそも数人しか居ないし…
「なっ!?我が精鋭はこの程度で音を上げたりせん!退け!…何をしてる!?早く立たんか!?」
「大丈夫かよあいつら…」
「さっきも言いましたけど…コーバッツさんはともかく部下の人たちは多分もう無理です…最悪、通常のモンスターにすら勝てないかもしれません…」
「…しゃあねぇな…俺たちは様子を見てくる…オメェらはどうする…?」
……別にあの人たちを助けに行く理由は無い…それに…私はアスナさんの方を見る…今の私は彼女の部下だ。
「リーファちゃん?」
「…え?」
「貴女が決めていいわ。…私は…貴女に付き合うから。」
そう言われ少し気が楽になる…そっか…一緒に来てくれるんだ…なら…
「行きましょう…放っては置けないです…」
助ける義理は無い…でも…見捨てる事だって出来ないから…!