ボスの部屋に踏み込むと羊の頭をして大剣を装備した文字通り悪魔としか言えない化け物が軍の人たちを壁際に追い込んで居るのが見えた。
「何してるんですか!?早く転移結晶を使って下さい!」
結晶は基本的に街の道具屋では売られておらず、迷宮区や、攻略に関係無いダンジョンの宝箱にしか入っておらずプレイヤー間で超高額で取引されるアイテムだけど…この状況で使わないのは有り得ない…まさか持ってないとかじゃないよね…?最悪私の手持ちを渡しても良いけど…
「駄目だ!結晶が使えない!」
「使えない!?」
結晶が使えないなんてそんな筈…!…いや、アルゴさんから聞いた事がある…閉じ込め系のトラップ部屋は結晶無効化空間になっている事があるって…でもまさかボスの部屋で設定するなんて…!
「撤退は認めない!最後の一人まで戦うのだ!」
「何を!?」
コーバッツさんがそう叫ぶ…有り得ない…!この状況…もう撤退以外の選択肢は無い!…あっ、不味い!
「させない!」
コーバッツさんをその場に無理矢理伏せさせ、ボス、グリームアイズの振るう大剣を躱した。
「貴様!何の真似だ!誰が助けてくれと「黙りなさい!」何だと!?」
「貴方は何を考えてるんですか!?今、貴方の采配ミスで部下の方々は全滅しようとしているんですよ!?この上、貴方が死んだらあの人達はどうすれば良いんですか!?」
「貴様!我々が負けると言うのか!?…何処へ行く!?」
私はストレージから予備の店売りの剣を出すとグリームアイズに投げ付けた。
「来なさい!私が相手よ!」
私一人でこいつは倒せない!でも、せめてここにいる人達が逃げる時間を稼げたら…!
「何してるの!」
後ろからアスナさんの声が聞こえたと思ったら急に身体が引っ張られ…くっ、首が締ま…!イタッ!いきなり放り投げられて私は尻もちを着いた。
「…ケホッ…ヒドイじゃないですか、アスナさん「一人で無茶する子にはこれぐらいしないと駄目でしょう?」いや、だって私が一番早いですし…それにあそこでモンスターに構ってたらあの人達全員死んじゃってたかもしれないから…」
ここは結晶無効化空間…良く見れば部下の人が一人足りない…てっきり脱出したと思ってたけど…つまりはそういう事…もう少し私が来るのが早かったらあの人は死なずに済んだ…せめて、残りの人だけでも…!
「言ったでしょう?一人で出来ない事は二人で…二人で無理なら皆で。…あいつを抑えるのは貴女一人じゃ無理よ。」
「そういうこった。せめて三人で当たろうぜ。」
「…ありがとうございます。」
風林火山の人達が軍の人達を出口に誘導するのを横目に見る…あと少しアイツを抑えれば脱出出来る…!私はもう一度予備の剣を投げた。
「余所見しないでね。貴方の相手は私たちよ!」