「……悪いが止まってもらおう。拙者はここを通る者を止める役目を仰せつかっておる。」
「……あんたアサシンか?」
……てっきり聖杯戦争で呼ばれるのは海外の英雄と思っていたんだが……目の前にいるのは和製の顔立ちに着ているものもどちらかと言うと見慣れた服装……まあ時代背景は古そうだが……そしてその手にある得物……刀、か。……セイバーはこの場にいるから当てずっぽうで可能性のあるサーヴァントを聞いてみる。
「……いかにも。拙者サーヴァントアサシン……名を佐々木小次郎と言う。」
……佐々木小次郎、ね。まさか自分から真名をバラすとは思わなかったが……まあ目の前にいる男の刀は確かにかなり長い。つーことはマジで燕返しの佐々木小次郎か。
「……」
立ち姿に隙が無い。ここは柳洞寺の入口へ続く石段だ。地の利は向こうにある。入口は奴の後ろ。
……ここを抜けるには……
「……シロウ。ここは私が……」
「……頼むわ。俺たちは何とかここを抜ける。」
少なくとも誰か一人がここで奴を抑えなければならない。……アルトリアなら一応適任だ。
「……セイバー、俺たちは同時に突っ込む。お前が抑えてる所を俺たちは飛び越える。……タイミングを合わせろ。」
「……分かりました。」
強者の余裕ってやつか。奴は隙こそ無いものの石段の上で微動だにしない。……気に食わねぇがこんな所でこいつに構ってる暇は無い。……本命は寺の中だ。贅沢にもサーヴァント一人が守ってるなんて思わなかったがこれで確定だ。……キャスターは中だ。
「……行くぞ。」
……結局の所俺が速攻で立てた作戦は無意味だった。あいつは俺たちが突っ込んで来た時点でアルトリアしか見ていなかった。つまり障害は無いも同然だった。
「……まさかあんたがここにいるとはな、葛木。」
ここにこうして立っている以上こいつがキャスターのマスターなんだろう。葛木宗一郎……か。
「……教師を呼び捨てか、衛宮。」
「だから何だ?高々十数年先に生まれたってだけだろうが。しかもこれから戦う相手に敬称なんか必要かい?先生さんよ。」
……正直苦手なタイプだ。こいつは俺のような素行不良生徒に取って天敵と言えるタイプだ。だが……
「……これから戦う相手だからこそだ。お前の態度は路傍の石に対するそれだ。戦いにおいて相手を侮る事は死に直結する。」
奴が構える。……やっぱりな。
「……ずっとあんたに違和感があったんだよ。あんたは日常に溶け込んでる人間じゃない。……あんたからは血の臭いがする……あんた人を殺してるな?」
こいつからはずっと切嗣に似た気配を感じていた。修羅場を潜ってるなんてもんじゃない……こいつは……!
「……遠坂、アーチャー……こいつとは俺がやる。お前らはキャスターの相手を頼む。」
「……良いの?私たちが援護をした方が……」
「……駄目だな。こいつは多分俺が戦った方が良い。」
こいつは魔術師の遠坂では多分荷が重い……
「……私を嘗めてない?これでも武術の心得はあるんだけど?」
「……いや。止めた方が良い。こいつはどちらかと言うと人を殺す拳だ。」
俺が適任だ。間違いなく。……勝てるとは思えないが。マシな戦いは出来るはず……
「……分かったわ。キャスターは私たちが相手する。……士郎?」
「……何だ?」
「……死ぬんじゃないわよ。」
「……とっとと行けよ。」
俺は出来ない約束はしない主義だ。こいつは多分俺の回復を上回る。気を抜けば間違いなく狩られる……。
「……行くぞ、葛木。」
相手の行動は分からない。……先手を取るしか、ない。