強化を足にかけ、一気に踏み込む…!
「なっ…!?」
慎二の不意をつこうとしたが、気づけば奴も俺の眼前に向かって来ていた。強化をかけた俺とほとんど同じスピードで突っ込んで来たのか!?
「おらぁ!」
俺はそのまま勢いを殺さず腕を振りかぶった。
「でぇい!」
奴もトンファーを俺に向かって突き出して来ている…!
「…ゴフッ!」
思いの外威力のあったそれを腹に受け後ろに下がり膝を付く。顔を上げれば俺の拳を顔面に受けた慎二が仰向けの状態から身体を起こしていた。
「何やってんのあんたは!」
「来るな!…時間が無いんだ…とっとと大聖杯の元に向かえ!」
「…何馬鹿な亊「心配するな、奴はお前らに手を出しては」そんな事言ってんじゃないのよ!あんたそんな身体で「奴は魔術を使っている!」見りゃ分かるわよ!魔術回路の枯れてるあいつが何で使えるかは分からないけど…!とにかくアーチャーだっているんだし、あんた一人この場に残して行けるわけないでしょうが!?」
「うるせぇ!時間が無いって言ってんだろ!?そもそもこいつは俺の獲物だ!誰にも譲らねぇ!」
俺は地面に手を付き立ち上がる…慎二は向かって来る様子は無く、ただこちらを睨んでいる。
「…慎二、この場に俺たち以外の奴らは不要だ、そう思わないか?」
「…その話に乗って僕に何のメリットがあるんだよ?少なくともアーチャーには残って貰う…でも、遠坂たちは見逃しても良い。…アーチャー、構わないな?」
「私が用があるのは衛宮士郎だけだ…。」
「…分かったよ。俺は優しいからハンデとして認めてやる…聞いてたなお前ら?邪魔だ、とっとと大聖杯の所に行けよ?」
「あんた「姉さん、ここは先輩の言う通りにしましょう」何言ってるの桜!?」
「…先輩は多分もう…もたないですから…先輩の意志を尊重してあげたいんです…」
「……分かったわよ…士郎…」
「…何だ?」
「…生きなさい。こんな所で死んだりしたら私はあんたを絶対許さない。」
「…怖い怖い。…分かったよ、精々みっともなく足掻いてやるさ。」
「…シロウ…ご武運を。」
連中が慎二とアーチャーの横を通り過ぎて行く…
「本当に待ってくれるとはな…」
「僕たちにも準備があるからね…アーチャー…」
「…もう終わる…UNLIMITED BLADE WORKS」
その言葉と共に眩い光が辺りを覆う…!
「グッ…!?」
咄嗟に俺は腕で目を覆う…何時の間にか見えなくなっていた左目にまで強い光を感じる…何だこれは!?
「…こいつ如きにこれを使うのは私としてはどうかと思うのだがね…」
「こいつを甘く見るな。土壇場でこいつが全部引っくり返して行くのはお前も見ただろう?例え如何に僕らの方が有利だとしても手は抜かない…全力で潰しに行く…!」
腕を外した俺の目に飛び込んで来たのは赤茶けた空に、荒野に刺さる無数の剣…そして歯車…
「固有結界…そうか。アーチャー、お前生前は魔術師…ククク…アッハッハッハ…!」
長年の癖となっていた解析をほとんど無意識に使っていた俺は気付いた…気付いてしまった!
「…今更だが…初めまして、並行世界の俺。…そして先に謝っておいてやる…すまねぇな。」
俺はその場で指を鳴らす。…それを合図に世界が切り替わる…反転する…!
「…な、に…!?」
「良い顔をするじゃないか、アーチャー…悪いな、お前の世界…乗っ取らせてもらった。」
俺の解析はその辺の魔術師を遥かに凌駕していると自負している…半人前以下の俺でもこれだけは誰にも負けない自信がある…!
「衛宮、これがお前の世界か…ああ…お前にはお似合いの世界だ。」
「お気に召してくれたかな?」
「…冗談。気分は最悪さ、クソッタレ。」
赤茶けた空は黒く染まり、空にポッカリ開いた穴から黒くドロドロしたものが流れ込む…そして地面を覆い隠すように徐々に広がる黒い泥…これが俺が唯一覚えてる、今も消えない過去の記憶…俺を形作った原風景だ。