俺は高度な魔術をどうやってもまともに使うことが出来ず仕方無く基本を詰めていたが事、実戦においては基本に忠実且つ、シンプルな戦術が意外な程綺麗にはまることが非常に多い、と言うのが魔術師殺し衛宮切嗣の教えだ。
それも魔術師、第一線で活躍出来る実力の持ち主こそ普通の子供でもまず引っかからないような原始的なトラップが通用してしまうんだそうだ…
地位や名誉を持つ魔術師に限って実は実戦経験に乏しく必然的にそういう結果を産んでしまうんだとか。
…最も普通の軍人がワンマンアーミー気取って近代兵器で武装して一人で挑んでも全くの未知で特殊な力を持たない人間は通常はそのまま返り討ちに逢うのが関の山…魔術にある程度精通し、体内の固有結界化による倍速移動、そして魔術師にのみ絶大な効果を発揮する起源弾…
これらが揃って初めて魔術師に対するジョーカー、魔術師殺し衛宮切嗣が存在出来るのだ…
「イツッ…!…チッ、やっぱキツイな…」
切り札が存在しないとは言え、そんな事で俺は今更諦めるつもりは無い…固有結界化による倍速移動は出来ないが強化の重ねがけでそれは代用出来る…反動が怖いが魔力は腐るほどあるから使うのには困らないし、傷は直ぐに治る…後は決め手さえあれば…!
「うぎっ…!くそっ…!」
基本は問題無い筈の俺だがその中でも苦手な魔術はあった…それが…
「くそっ!また駄目か!何でだ!?」
俺は切嗣が置いていった起源弾を投げ捨て悪態をついた。俺の苦手な魔術…それは解析魔術だ。
一度出した物は基本消えろ、とでも言わない限りはずっとその場にあると言う異常な性質を持つ俺の投影魔術だが出したいものの構造を知らなければ結局それはガワだけの偽物どころか単なるハリボテだ…棒切れ一本にしたって振り回しただけの勢いだけで圧し折れそうなそれは相手を倒すどころか威嚇にすらなりはしない…!
「駄目だ!分からない!」
再び起源弾を掴み解析する…分かる。脳裏にこの弾丸の構造が浮かんでくる…激しい頭痛で一瞬ノイズが走るがそれは本当に一瞬の事だ…少し前までの様に激痛ならまだしも今更この程度の痛みで音はあげない…しかし…!
「何で消えるんだ…!?」
俺は未だに脳裏に見えてる設計図の通りに起源弾を投影出来ていない!何でだ!?道場に置いてあった竹刀は複製出来た…違いなら分かってる!たかが大量生産か、個人が丹精込めて作り上げた世界に一つだけのオーダーメイドってだけだ!だが物は物だろう!?一体何が違う!?
「くそっ…!分からない…!俺は何を間違えてる…?っ!?」
そこで俺は屋敷に気配を感じた…藤ねぇじゃない…男の気配だ…間違い無く…いや、それより…
「この屋敷には結界が張られているんだぞ!?」
侵入者はあからさまな殺気を込めながらここに向かって来ている…結界は未だに反応しない…!
「迎撃…いや、敵が俺より弱い保証は無い…だがしかし…」
この屋敷に張った結界は余りに敏感だ…知らない人間が来る時はあらかじめ設定して置かないと俺の脳裏にかなりうるさい警報がなるのだ。…一度郵便配達員が手紙を入れるためポストに手を突っ込んだだけでなった事がある位だ…にもかかわらず鳴らない…
「……」
敵が俺の考えている人物なら小細工を弄したところでどうせ俺の不利は覆らない…ならば…!
「結局真っ向から受けて立つしかねぇな…!」
来るなら、来い…!どういうつもりか知らないがそっちがその気なら俺は逃げねぇ!最期まで抗ってやるよ…!