「ハッ!どうしたアーチャー!?逃げ回るだけか!?」
「…」
上から降って来る剣を必死に躱しながら武器を構えもしないアーチャーを只管に追う…傍から見れば追い詰めているのは俺に見えるかもしれないがその実、消耗しているのは俺の方だ…アーチャーの意思かは知らないが今の俺にこの戦法は非常に有効…
……永久に魔力の供給が行われている今のアーチャーと違い、無限に近くても実際は有限で、既に尽きかけ、それを扱う俺ももうボロボロ…このままの展開が続けば間違いなく倒れるのは俺の方だ…
「クソがァ!?まともに戦いやがれ!」
…元々色々制約も多く、魔術師としても半人前の衛宮士郎が辿り着いた戦法の一つがこれだったのだろう…決して得意とは言えない接近戦を完全に捨て、宝具の数で相手を消耗させて行く…そして疲れ切った所を仕留める…本来格下である俺と相対して戦っていたのが可笑しかったのだろう…
「ッ!…しまっ…!ぐあっ!?」
「シロウ!」
一瞬意識が飛んだ所で腹に蹴りを入れられ倒れ込む…クソッ!立ち上がれねぇ!
「チッ!そんなに気に食わないか!?お前に従わない衛宮士郎の存在が!」
アーチャーがこちらに向かって歩いて来る…
「何が人類の滅亡を防ぐためだ…!誰かの運命一つ救えなくてよく言えるよなぁ!」
アーチャーが俺の前に立つ…
「人類の滅亡を防ぐために原因となりうる者全てを殺害する?…何人殺した?…何回衛宮士郎の心を壊せば終わる?…高々数百人程度の人間が生きてるだけで滅ぶ様な種なら…とっとと滅んじまえば良い!」
「…ハッ!待っててくれてサンキューな、俺の遺言は終わりだ…だが、俺だけだ…完全に壊せなかったが聖杯の機能は停止したんだ…他は見逃してくれても良いだろ…?」
アーチャーが投影した剣を振り下ろす…
「ッ!駄目!」
「なっ!?」
イリヤが俺の前に立って…!
「…剣が止まった…?」
アーチャーの振り下ろした剣はイリヤの頭上で停止した。
「…衛宮士郎…」
「…アーチャー…お前…」
アーチャーの持っている剣が消える…
「貴様に問う…先程貴様は、自分以外は見逃せ、そう言ったな?」
「ああ。」
「……それに偽りは無いか?」
「無い。俺はもう十分に生きた。」
切嗣が死んだあの日から俺はずっと後悔して生きて来た…何をしても心が満たされる事は無かった。…聖杯戦争何て言う下らない物に参加してもそれは変わらねぇ……まあ収穫は多少有ったかもな…
「…ならば貴様のその身体、私に委ねる気は無いか?」
「あん?何を言ってやがる?」
「これから一生人間で無くなる覚悟はあるか?」
「ハッ!元々俺はもう人間じゃねぇよ。」
「…お前に私の力を託す。」
「あ?」
「…衛宮士郎であって衛宮士郎では無い貴様なら、私の出来なかった事を出来るかも知れん…私はそれを見たくなった。」
「…俺に"正義の味方"になれ、と?」
「貴様が絶対に成りたく無い者に成って貰う…それが貴様以外の者全員を助ける条件だ……どうする?」